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プログラミング教室で1から勉強

起業に先立ちエンジニア探しに苦労していた頃、ある企業の最高技術責任者(CTO)から「いかにも財務省、マッキンゼーみたいな服装はやめたほうがいい。スーツはジーンズの敵ですから」と言われた。すぐには意味がわからなかったが、上から目線で「こういうものを作って」と指示するような姿勢では、エンジニアはついてこないのだと気づいた。だとすれば、まずは自分自身が「ものづくり」に挑戦すべきなのではないか。そう考えた柴山氏は、プログラミング教室で1から勉強し、ウェルスナビのプロトタイプのコードを自分で書くという、ある意味無謀な挑戦に出た。

「当時、私は37歳。教室の生徒も講師もほとんどが学生でしたから『場違い感』は半端なかった。でもマッキンゼーも辞めて退路を絶っているので必死でした。早朝から深夜まで、週末もコードを書き続けていると、周りの人たちが徐々に『面白そう』と画面をのぞき込むようになり、自然と手伝ってくれるようになった。そしてついに5週間でプロトタイプを完成させることができたのです。自ら手を動かす大変さと、思い通りに動いた時の感動を味わったことで『ものづくりする金融機関』というビジョンが生まれました」

「サステナブルであること」も自身の経験に根ざす。財務省を辞めたのも、どんなに仕事が面白くても、長時間労働で家庭を犠牲にする生活は持続できないと感じたから。経営者となった今も、最初に家族との時間を確保し、残りの時間で仕事をすると決めている。「目の前のことに集中すれば短期的な成果は出やすいが、中長期的には持続できない。それは経営もそうだし、資産運用における『長期・積立・分散』も同じことです」

22年6月時点でウェルスナビの預かり資産は7000億円を突破した。柴山氏は「インターネットや水道などと同じく、誰もが必要とし、安心して使えるサービスに成長させたい」と意気込む。人々に役立つ社会インフラを作るーー。その思いは財務官僚を目指した学生時代から変わらない。

(ライター 石臥薫子)

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