変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック

リスキリングでデジタルマーケティングを学ぶビジネスパーソンが増えている。企業の競争力や収益の拡大に欠かせなくなっており、人材市場でのニーズが急激に高まっているスキルとして注目されているためだ。今回は学ぶ方法やポイント、利用できる助成金・給付金を紹介する。

デジタルマーケティングのリスキリングとは?

デジタルマーケティングのリスキリングとは、新しい職業に就いたり、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応したりするために、新たにインターネットやIT技術を用いたマーケティング手法を学ぶことだ。

今のマーケティング現場でデジタルスキルを活用しない場面はほとんどない。代表例として、Webサイト運用やアフィリエイト、SEO(検索エンジン最適化)対策などのWebマーケティング分野が挙げられる。ユーザーの行動分析に基づくWebサイトの改善を通じて、収益や認知の拡大につながる効果が見込める。ほかにも、オンライン・オフラインにかかわらず、ビックデータやデジタルサイネージ、アプリなど、多様なデジタルチャネルも学習の対象となる。

リスキリングでデジタルマーケティングが人気なワケ

デジタルマーケティングが注目を集める主な背景として三つが挙げられる

①デジタルマーケティング人材の需要拡大

まずデジタルマーケティング人材の需要拡大だ。いまや消費者は実店舗だけでなく、EC(電子商取引)サイトで商品を探すようになった。ネット上で買い物をする消費者の行動分析は、企業にとって必要不可欠となった。しかし、いまなお実店舗主義をとる小売企業が多い日本では、データ分析やネット集客をできるデジタルマーケティングに長けた人材は少ない。常に労働市場ではデジタルマーケティング人材が払底している。

②消費者ニーズをつかむ重要性が増大

消費者ニーズをつかむ重要性が増しているビジネス環境の変化も大きい。ネットでは消費者やユーザーの行動が数字で可視化される。例えば、Webサイトでは、閲覧数を示すPV(ページビュー)のほか、サイトの訪問者数を意味するUU(ユニークユーザー)や、1ユーザーが1回の訪問でどれぐらいのページを見たかを示す回遊率など、多様な指標が存在する。

オフラインで企業が消費者の行動を分析するためには、アンケートなど、労力がかかるアナログな手法を取らざるを得なかった。しかし、デジタルマーケティングが登場して以降、企業はWebサイト上の情報を集め、多様なニーズを持つ消費者の詳細な行動分析が可能になった。

③既存職種の知識・スキルとの相乗効果

営業やエンジニアなど、既存職種の知識・スキルとの相乗効果に期待する向きも多い。営業活動による効果を支援、データ化するSFA(営業支援ツール)や、見込み客の確度を自動判別するMA(マーケティングツール)の使い方を学ぶことで、データに基づく戦略的な営業活動が可能となる。結果、リスキリング前と比べて、営業の成約率やアポ獲得率の上昇が期待できる。

また、エンジニアがデジタルマーケティングを学べば、プロダクトの開発・効果検証といった場面で、社内外への効果的な提案が可能になる。

企業にとっても、デジタルマーケティングを既存職種の知識・スキルと掛け合わせることで、業務改善や新規事業創出につながる可能性が高まる。

リスキリングでデジタルマーケティングを学ぶ方法

デジタルマーケティングの代表的な学習方法を五つ紹介する。

①書籍やWebメディアでの情報収集

書籍やWebメディアによる情報収集は、初心者から上級者まで、幅広い層におすすめの学習方法だ。

実際、書籍は専門知識が一冊にまとまっていることから、初心者が一から学習する上で最適となっている。すでに業務経験がある方が調べ物をしたり、改めて専門知識を深めたりしたい場合でもおすすめだ。

一方、Webメディアは、必要な知識をピンポイントで習得したい、最新トレンドをつかみたい、といったニーズを持つ中級者や上級者におすすめの勉強方法だ。事実、Webマーケティング会社のオウンドメディアや、海外の専門メディアは、通常業務では知り得ないノウハウやトレンド情報を掲載している場合がある。それらのサイトをブックマークしておき、逐一チェックするとよいだろう。

②資格取得

資格取得を目指すのも獲得した知識の水準を証明したい場合におすすめの学習方法だ。

Webマーケティングに関する資格では、ウェブ解析士やGoogleアナリティクス個人認定資格(GAIQ)などがある。

このうち、ウェブ解析士は、デジタル化戦略の立案方法やウェブ解析の設計、インプレッションの解析についての知識を学ぶ。1日約5時間で開催される認定講座を受けると、より高い精度でウェブ解析の知識習得も可能だ。資格取得までの時間はWeb業界未経験者で2カ月〜4カ月(学習時間40〜60時間)と短く、初学者におすすめの資格といえる。

③スクールや講座・セミナー

スクールや講座・セミナーは、豊富な知識や経験を持つプロの指導を受けながら、短時間でデジタルマーケティングの知識を身につけたい方におすすめだ。

講師に質問や相談すればその都度疑問点を解決できる。オフラインの場合には、グループワークや雑談などで、ほかの参加者と交流を深め、人脈の構築もできるだろう。

中には、就職・転職支援を手がけるスクールもある。「リスキリングでキャリアチェンジ・キャリアアップしたい」といった希望を持つ方は、スクールの通学も選択肢の一つだ。

④eラーニングサービス

eラーニングは、自分のペースでデジタルマーケティングを勉強したい方におすすめだ。基本的には自宅で受講するため、自発的に学ぶことが苦でない方に向いている。

eラーニングサービスで有名なのは、約21万以上のコースが存在するUdemyだ。SNS運用やメールマガジン、オウンドメディアなど、ありとあらゆるWebマーケティングのスキルが揃っている。

eラーニングは、動画学習サービスなど、受動的なものだけではない。プログラミングスクール「Progate」のように、実際に手を動かしながら、より実践的に知識やスキルを学べるサービスもある。

⑤ブログやSNSの運用

ブログやSNSを運用することでアウトプットを通じてデジタルマーケティングを学ぶこともできる。

ブログでは、レンタルサーバーの契約やドメインの取得などのサイトの構築過程だけでなく、Webページの作成やデザイン、コンテンツ作成といったオウンドメディア立ち上げに必要な工程をひと通り経験できる。あわせてアフィリエイトにもチャレンジすれば、ブログ運用を通じて「どうすればPV数が増えるのか」「ブログで紹介した商品・サービスがどうすれば売れるのか」といったビジネス感覚も養えるだろう。

リスキリングでデジタルマーケティングを学ぶときのポイント

次にリスキリングでデジタルマーケティングを学ぶときのポイントを四つ紹介しよう。

①最新のトレンドを追う

最新のトレンドを追うことを怠ってはいけない。新たな技術やノウハウが日々登場していることから、アップデートに手を抜くと保有する知識やノウハウがたちまち陳腐化してしまう。

例えば、SEO(検索エンジン最適化)は、Googleが検索アルゴリズムのコアアップデートを度々実施していることから、検索順位変動が起きやすい。実際、E-E-A-T(経験、専門性、権威性、信頼性)の重要性を高める目的で、2022年9月12日に実施されたSeptember 2022 Core Updateは、多くの国内サイトの検索パフォーマンスに影響を与えた。詳細な影響は不明だが、23年3月15日にも23年初のコアアップデート「March 2023 Core Update」が実施されている。

SEOのように、デジタルマーケティングは、トレンドや外部環境が変化しやすい。専門サイトやニュースサイトを常にチェックしておくことが重要だ。

②実務を意識する

実務を意識する姿勢も欠かせない。例えば、営業担当者であれば、LP制作機能やコンテンツ制作機能など、MAの使い方を学ぶとよいだろう。他方、広報担当であれば、自社の認知拡大につながる動画マーケティングやSNS運用の学習が最適となる。

③教材選びを慎重にする

教材選びは慎重に取り組みたい。十分な学習効果を得るためには、自身の業務や社内の課題解決に直結した教材の選択が重要だ。例えば、総務・人事など非マーケティング部門の担当者が、いきなりWeb広告やSEOを学んでも学習に対する費用対効果は低い。専門知識を学ぶよりも、マーケティングの定義や外部環境の分析方法など、基礎的な知識を網羅した教材を選ぶ必要があるだろう。

④モチベーションを維持する

モチベーションの維持にも気を配りたい。リスキリングは強制力がない場合が多いことから、目標や目的を設定しないと、継続する動機が失われやすい。

モチベーションを維持する上では、進捗状況を可視化するToDoリストの作成が有用とされる。ToDoリストの作成によって、タスクの優先順位が明確となり、作業効率が向上するためだ。タスクの達成度も可視化されることから、目標から逆算した知識・スキルの習熟度も把握しやすくなる。

リスキリングでデジタルマーケティングを学ぶ際に使える助成金・給付金

リスキリングでデジタルマーケティングを学ぶ際に使える主な助成金・給付金を紹介する。

東京しごと財団:DXリスキリング助成金

都内に本社または支店・営業所がある中小企業が従業員に対して実施した、デジタルトランスフォーメーション(DX)に関する職業訓練、eラーニングの実施経費を助成することで、企業でのDX人材の育成を促進することを目的としている。

(詳細は紹介HPを参照)

厚生労働省:人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)

事業内職業能力開発計画に基づく職業訓練実施計画届の作成や職業能力開発推進者の選任といった要件を満たす雇用保険適用事業所の事業主が、労働者に対して新しい分野で必要となる知識および技能を習得させるための訓練を計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する厚生労働省の助成金制度だ。

(詳細は紹介HPを参照)

厚生労働省:専門実践教育訓練給付金

中長期的なキャリアアップを目的とした厚生労働省の給付制度で、長期の専門実践教育訓練を受講し、修了すると、ハローワークから受講費用の50%が支給される。デジタルマーケティング関連では、第四次産業革命スキル習得講座がある。2023年4月1日時点で115講座が指定されている。

(詳細は紹介HPを参照)

今回は、多様なデジタルチャネルを学習の対象とするデジタルマーケティングのリスキリングについて、学ぶべき理由や学習方法、学ぶ時のポイントについて解説した。デジタル化の波がすべての業界に押し寄せる中、デジタルマーケティングの習得は、企業や個人が生き残りを図る上で必要不可欠。本記事を参考にデジタルマーケティングのリスキリングを進め、ビジネスの成長につなげていただきたい。

(ライター 小村 海)

新着記事

Follow Us
日経転職版日経ビジネススクールOFFICE PASSexcedo日経TEST

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック