ベンチャー役員から早稲田MBA 経営者もリスキリング
myリスキリングストーリー経営者とサラリーマンの
二足のわらじを履く理由
その後、宮本さんはビットスターを辞め、新たな一歩を踏み出した。選んだのは、幼い頃から目指していた「経営者」とサラリーマンという二足のわらじを履く道だ。
22年7月に設立した自身のウェブコンサルティング会社には、スタートアップを経営する知人やMBAの仲間から、コンサルや企画・制作までさまざまな仕事依頼が舞い込む。自身の専門外のことを頼まれた時はMBAの仲間でそれが得意な人に声をかけ、スポットでヘルプに入ってもらうこともある。そういう人脈も、MBAに行ったからこそ得られた。
会社を作る一方で転職サイトに登録すると、スカウトの数がこれまでの転職時より格段に増えた。スタートアップ2社での役員経験×MBAでのリスキリングが、多くの企業にとって魅力的に映ったのだろう。
それにしても、なぜ宮本さんは二足のわらじを履くことにしたのか。
「自分の会社は、今はとりあえずウェブコンサルをやっていますが、ゆくゆくは後継者がおらず困っているような中小企業の事業を継承し、大きく成長させたいと思っています。そのために今から経営者としての経験を積んでおきたい。一方でサラリーマンを続けるのは、MBAの入試でも授業でも『MBAの先に何をするのか』を問われ続けたことが大きい。その中でこれからの自分の人生は社会課題の解決に使いたい。そのためには優秀な人たちと一緒に働き、既存組織が力を発揮できるように貢献したいという思いが強くなりました」
複数の内定の中から最終的に選んだのはDOTZ。より高い条件を提示した企業もあったが、ミッションへの共感や現在課題や未来課題の解決に挑戦できるかどうかで決めた。同社は宮本さんが加わった2カ月後の22年11月、飲食の実店舗の集客を支援するLINEのミニアプリをリリースした。狙うのはコロナ禍で多大な影響を受けた飲食店の売り上げ増。「今まさに課題を抱え、苦しんでいる人たちの役に立てる」という思いが、宮本さんを突き動かしているという。

「自分のWantを明確に作る」「危機感を持つ」――宮本さんはこの2つを胸にリスキリングに踏み出した
最後に宮本さんにリスキリングしながら点と点をつなげていくTipsを聞いた。一つ目は「自分のWant(ウォント)を明確に作ること」。宮本さんの場合は「経営者になる」だったが、自分のありたい姿を思い描くことができれば、おのずと今の自分に足りないもの=次に向かうべき点が見つかる。二つ目は「危機感を持つこと」だ。
「人生100年時代、この先何が起きるのかは誰にもわかりません。僕はスタートアップの経験が長いので、結果が出ないとクビや降格、減給は当たり前、下手すれば会社自体がなくなるという状況に身を置き続けてきた。だからこそ、安全保障としてどこでも食べていけるスキルが必要だと思い、僕の場合それがMBAだったわけですが、まずは危機感を持つことが大切だと思います」
(ライター 石臥薫子)