交渉術の名著初邦訳 相手に勝ったと思わせるのが理想
八重洲ブックセンター本店
ビジネス書・今週の平台交渉の目的は相互利益の解決策
第2部では交渉を有利にするプレッシャー・ポイント、第3部は米国を含む国別の交渉術の特徴、第4部では相手を理解することの重要性に焦点をあて、ボディーランゲージや会話に隠された意味、交渉人としての心構えなどを説く。最後の第5部では、副題にもある本書のメインテーマ「パワー・ネゴシエーション」なるもののパワーの源について語り、それをどのように交渉に使うか、そして理想的な交渉とはどのようなものかを語っていく。
改版に寄せた「はじめに」の中で著者は「私の考える交渉の目的とは、自分も相手も勝利したと感じて交渉を終えることであり相互利益の解決策を生み出すという主張に変わりはありません」と述べている。スキルはもちろん、このような交渉の本質を学べるのが本書の大きな魅力だろう。
「ビジネス書の中でも思考法や話し方の本はコロナ禍でも好調に売れている。この本が売れているのもそんな流れを反映している」と同店でビジネス書を担当する川原敏治さんは話す。
息の長い売れ筋に脳活法や思考実験の本
それでは、先週のベスト5を見ていこう。
1位は採用のデジタルトランスフォーメーション(DX)を説いた本。2位は、脳を活用してパフォーマンスを最大限発揮する方法をまとめたもので、12年刊の本に加筆・修正してタイトルを変え、昨秋に再発売してから、ランキング上位によく入ってくる。3位は今回紹介した交渉術の本だ。4位はパズル作家による「トロッコ問題」「アキレスと亀」といった思考実験の紹介書だ。こちらは17年刊の本だが、1月に同書店を訪れたときも2位の脳活本とともにランクインしていた。5位は、タイトル通り徳川家康が現代の首相になったという設定のビジネス小説。21年3月刊だが、「八重洲ブックチョイス」というおすすめ本の企画でこの冬のおすすめの1冊に選んでおり、売り上げを伸ばした。
(水柿武志)