変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

「日本では就職すると、組織化されていく中で自分の個性が失われる感覚があります。ファーストキャリア形成期の人に聞くと、キャリア展望を描けない人がすごく多いです。キャリアオーナーシップだと新しいチャレンジができるし、持続的に自分のキャリアに向き合えます。だからこそ目の前の業務に対する取り組み方や認識が、より主体的なものになります。仕事を辞める選択をしなくてもよいのですから」

欧米では「自分たちが主人公」の世界観

――世界では一般的なのでしょうか。

「ホワイトカラー層では本当に一般的です。欧米ではレイオフ(一時解雇)がそれなりに起こるので、自分でキャリアを育てて市場価値を高めていこうという文化の中で働いています。自分たちが主人公となり人生をより良いものにしていく世界観があり、その中に働くことが入っています。労働が誰かにやらされているという感覚は少ないと感じます」

――日本でも増えつつあるジョブ型雇用との関係性はどうなりますか。

「終身雇用がなくならない限り、ジョブ型とメンバーシップ型のハイブリッドがスタンダードにならざるを得ません。人的資本を最大化するエンジンとしてジョブ型は有効ですが、扱いを間違えると成果主義の失敗を再現しかねません。一方、人事評価で『やってきたことのKPI(評価指標)』と『これからやっていくこと』を両方見る企業は増えています。例えばサイバーエージェントやカゴメなどは、キャリアオーナーシップ型キャリア形成の支援という要素を上長の360度評価の項目に入れています」

田中教授は「失われた30年」を見ると「組織内キャリアで失われたものがあるのでは」と指摘する

田中教授は「失われた30年」を見ると「組織内キャリアで失われたものがあるのでは」と指摘する

――個人がキャリアオーナーシップを確立するためには何が必要ですか。

「事業戦略や経営戦略と同じノウハウを、なぜキャリアに落とし込むことができないのでしょうか。『どうなりたいか』を客観的に言語化すればいいのです。私は2週間に1回、10分間のキャリアチェックをして仕事の分配率と生産性を確認しています。今年何をやりたいか、そのために資本をためているかを見て仕事の選択と集中を進めるべきです。習慣化できない人は、なぜできないのか書き出してみるといいでしょう。そして小さなことでいいので、今できることをやっていくべきです」

――企業の意識は変わってきていますか。

「経営戦略として自立型キャリアトランスフォーメーションを推進し、そのためにキャリア開発研修も作っていかなければならないと考えます。企業によってできることと、できないことがあるでしょうから、オープン化して連携すべきです。その点で意識は変わってきていると思います」

――キャリアオーナーシップのエバンジェリスト(伝道師)としての活動は。

「例えば『キャリアオーナーシップとはたらく未来コンソーシアム』を先進的な8社と立ち上げ、議論を重ねています。アニュアルレポートをまとめていますが、他の企業にとっても相当なヒントになると思います。ジョブ型雇用が必須ではなく、あくまでも人材戦略の一部ということも示すことができるでしょう」

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