変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

著者はこう述べています。「実は早いうちから株式投資を始めた中高生は株式投資経験のない学生よりも就職先選びにかなり有利です。なぜなら株式投資の大きな目的は成長の可能性の高い企業を見極めることであり、それは就職活動の目的と全く同じだからです。噂やイメージ、ネットの匿名掲示板情報をもとに決断を下すと失敗するのは、投資も就職活動も同じです」(20ページ)。就業前の学生が実際に株式投資をするかどうかは別として、こうした視点は冒頭記した学生の金融教育に通じる考え方かもしれません。

(本書の)内容は、2021年の1月から3月に私の3人いる息子のうち、高二の次男と中三の三男に一回1時間、7回にわたって教えた株式投資の基本についての講座が元になっています。この講座を始めたきっかけはある日夕食を囲んでいた時に、次男が「株やってみたいな」と突然言い出したことです。理由を聞くと「何となく」と言うのですが、おそらくテレビで最近株価が上がっているというニュースを見たり、それについて妻と私が会話しているのを聞いたりしているうちに興味をもったのでしょう。
この年代から株式投資について興味を持つのはとてもよいことです。株式投資のリターンは時間の関数ですから、始めるなら早ければ早い方がいい。私が株式投資を始めたのは30代になってからと遅めで、しかもいろいろと手探りでやってきたために最初の10年は失敗ばかりでした。私が経験を通じて学んだことを中高生のうちから理解し、実践できればこの先豊かな生活を送ることができる可能性が高まるはずです。そこで当時中三だった三男も巻き込んで、株式投資の基本的な考え方を教えることにしました。
(【講義の前に】 僕らが株を学ぶ理由 18~19ページ)

株式投資の基準は「過去」よりも「将来」予測

株式市場での上場企業の株価は、いうまでもなく日々変動します。上がったり下がったりがあるわけですが、著者が本書を通じて説いているのは、その上がり下がりの要因を分析する力、そしてその分析をもとに、今後どうなるのかを予測する力、そこに学生が金融教育を学ぶ価値を見いだしている点です。

株価を形成する過程では景気全体の見通し、業界のトレンド、個別企業ならその提供する製品やサービスの需要動向など複合的な要因がさまざまあるでしょう。それらをどう読み解くか。公開されている事実やデータを駆使して、先読みする力を養う意味では、学生だけでなく次世代の経営幹部と目される「若手リーダー」にも大いに参考になるところが多いはずです。

確かに過去の実績は大事だね。もちろんそれは重視するんだけど、株に投資するときの将来の予測数字を見る。例えばいま君らも使ってるスマホね。いまの形でのスマホが生まれたのはつい14年前のことなんだけど、あっという間に広まっていまではほとんどの人が使うようになった。でも10年前は一部の人しか知らなかった。その頃にも携帯電話、いまで言うガラケーは十分普及してたんだけどね。父さんは初めて出たiPhoneも、アンドロイドスマホも買って使ったよ。でも父さんみたいに新しいものをとりあえず買って試す人は世の中のごく一部だし、通信料金も高かったから誰にでも手を出せるものじゃなかった。でも通信料金が下がって、いろんなアプリが提供されて、電池の持ちもよくなり、もっと使いやすくなれば利用者は増えるだろうと、投資家は考える。そして、実際その通りになった。
(第4講 父さんの保有銘柄 200ページ)

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