変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

この敏腕上司との出会いが人生を変えた。「クリエーティブ力がすごかった。既に広告費の用途が決まってしまっている分譲マンションに対して、その街全体の魅力をアピールする仕掛けを提案。マンションの価格そのものを高めることで広告費を新たに捻出させ、さらには完売させた。視点が他の人とは違い、企画・構想力が群を抜いていた」という。

リクルートで鍛えられたという森さん

リクルートで鍛えられたという森さん

その時、気づいた。「自分は仕事ができると勘違いしていた。リクルートの名前で、完成された商品を売っていただけ。自分には何もなかったのだ」と猛省した。厳しい上司の下で、休日返上で働いた。

「あの2年は、死ぬほどつらい修業の日々だった」と振り返る。徐々にプロジェクトを任され、社内のクリエーティブコンテストで入賞した。そして東京湾岸の大規模都市開発のプロモーション担当に抜てきされた。「全社表彰もいけるぞ」と自信満々でのぞんだ時、11年3月に東日本大震災が起こった。湾岸部での液状化が社会問題となり、プロジェクトが止まった。

起業に不思議な自信、意外にも上司も賛同

「相手が自然ではしかたがない」。あきらめつつも、自分にはどうしようもないところで決まっていく物事に、悔しさで一杯だった。プロジェクトがなくなり、突然暇になった。余暇の時間で社員研修用のeラーニングをやると、「面白くない」と感じた。会社が受けさせたい研修用のプログラムと、個人が主体的に学びたくなるプログラムは違う。

「自分なら自身が学びたくなる動画コンテンツのサービスをつくれるのでは」と思い立った。自分で会社を作れば、他人に重要な意思決定を委ねていくことが限りなく少なくなる。この2年、成果を出す力を徹底的に磨いてきた。自分ならできると不思議な自信がわいた。

「会社を辞めて起業します」と例の厳しい上司に告げると、意外なことにすぐに賛成してくれた。実はこの上司は、24歳の時に起業した経験があった。「失敗しても死ぬわけじゃないから、挑戦してみた方がいい」と背中を押してくれた。

スタートアップ系有名人を次々起用、動画がヒット

震災後の秋には社会人向けのオンライン教育サービスを立ち上げた。食べるにも困るほどの「どん底起業」だったが、実はサービス自体は最初からヒットしていた。

ヤフーの川辺健太郎氏(現在のZホールディングス社長)やカヤック社長の柳沢大輔氏、ビズリーチ創業者の南壮一郎氏――。スタートアップ系の有名人が語る無料の生配信を開始、ネット上で話題になり、初月にユーザー数は1万人を超えた。

しかし、「慌てない方がいい」とマネタイズを急がなかった。広告モデルではなく、信頼性の高いサブスクモデルをつくるため、当初は収入ゼロで我慢し続けたのだ。

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