転職して天職に出合った カスタマーサクセスは伴走者
HiCustomer 高橋歩さん
最新JOB図鑑――転職活動で苦労しませんでしたか。
エージェントを通したのは1社のみです。カイゼンの次は統計分析を手掛けるサイカに入ったのですが、楽天時代から、広告効果分析サービスのサイカ(東京・千代田)の社長と面識があり「顧客が定着しない」という悩みを聞いていたところで声がかかりました。現在のHiCustomerへの入社に際しても、面識があった2人の取締役のところに「CSをやりたい」「CSに携わる人をサクセスさせたい」と直接掛け合いました。
ただ、目標が明確な大企業から何もかも自身で決めるスタートアップに移る際は、慣れるのに苦労が多かったです。楽天からKaizenに移籍したときも、自身のパフォーマンスを発揮できるまで3~4カ月かかりました。職歴の関係で開発に近い部分を求められ、自身の強みではない点での期待に必死に応えようとしていたからです。その時、どんなフィールドでも「まず自分ができることから頑張るしかない」と悟りました。

CSの普及に向けてセミナーなどへの登壇も増えてきた(中央奥が高橋さん)
CSは「キャリアの中継基地」
――CSという仕事の魅力は何ですか。どんな人が向いていますか。
何より、成功まで伴走できた際に顧客から「ありがとう」と言ってもらえるのは最高の幸せです。最初は(クラウド経由で業務ソフトを提供する)SaaSの周辺で注目され始めましたが、どんどん他の業態に拡大してきていると思います。クラウド化の加速などで「所有から利用へ」というシフトが進む中で、今後も注目度は上がり続けるのではないでしょうか。
そもそも、ベースとして自分だけでできることは少ないです。独りよがりにならず客観的な視点に立てること、相手に共感できること、そして何より好奇心が必要な仕事ですね。社内外の関係者をうまく巻き込み、長期的な視点を持って顧客をしっかりと成功に導いていくためのプランを描く……そのためにはロジックやデータの蓄積も大事です。その点でいっても、これまであらゆる現場で経験したことが全部つながってきていると思っています。
――高橋さんにとってCSの仕事とは、どんな存在でしょうか。
「自分が信じられる『未来』を正解にする作業」だと思っています。仕組みの運用の面などで経験が少ない若手にとっては大変な仕事ですが、モノの売り手・買い手・社会の「三方よし」を作れる職業だと思っています。何より、売り手と買い手の橋渡し役として、これからもずっとなくならない仕事だと思っています。
例えば営業出身の人が、CSの仕事を通じてデジタルマーケティングやプロダクト開発などの知識を蓄えることで、マーケターやプロダクトマネジャーになれる可能性も出てきます。いわば「キャリアの中継地点」ですね。そしてCS自体も、今後もっと多様化していくと思います。UX(ユーザーエクスペリエンス=顧客体験)デザインやCSプログラムの設計など、ヒューマンタッチの要素とテック要素がどんどん融合していくのではないでしょうか。
(沢沼哲哉)