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出生直後の時期に大きな意義がある

個人的には、産後パパ育休を取るならば数日ではなく、2週間から4週間程度は取得して育児に主体的に関わってほしいと思います。さらに可能であれば、その後に別途、従来からの育休取得を検討してみてはどうでしょうか。特に産後パパ育休の対象期間である出生直後の時期に、わが子を授かった男性が一定期間であっても育児にコミットするということには大きな意義があると考えています。

その理由はいくつかあります。共働き夫婦が増えるなか、性別役割分業で妻が主として育児を担うスタイルが定着してしまうと、その後の夫婦の働き方や妻のキャリア選択、ライフスタイルにまで影響を与えかねません。子どものジェンダー観にも影響が出てくるでしょう。生まれた直後から主体的に育児をすることで、親としての自覚や子への愛情、パートナーとの絆も深まっていくはずです。

例えば、カナダの研究では、父親が育休を取得した結果、子どもが3歳になった時点での父親の家事・育児時間がともに2割ほど増えたといいます。さらに別の論文では、母親のフルタイム就業率が5ポイント上昇したという報告もあります。

何よりも、育休を取ってワークライフバランスを大事にしたいと考える男性の意思を尊重する必要があるでしょう。パーソルキャリア(東京・千代田)が2021年10月、20~59歳の男女に実施した意識調査では男性の8割が「将来、育休を取得したい」と回答(「必ず取得したい」と「できれば取得したい」の合計)。こうした結果から、これまでは育児休業が取りにくい職場風土や収入減少、昇進への影響などを考慮して取得を見送ってきたケースが多いと考えられます。それは、男性の育休取得率(21年度は13.97%、厚生労働省の「雇用均等基本調査」)を見ても明らかです。

家事・育児能力が高い男性が求められている

さらに特筆すべきは、男性の家事・育児能力(の高さ)は、今や女性が結婚相手に求める条件としても注目されているということです。9月に国立社会保障・人口問題研究所が発表した21年の「出生動向基本調査」によると、結婚相手の条件は、男性は女性の経済力を「重視」または「考慮」する傾向が上昇し(48.2%:前回となる15年調査 41.9%)、女性は男性の家事・育児の能力や姿勢を「重視」する割合が大きく上昇(70.2%:前回となる15年調査 57.7%)する結果となりました。

結婚相手の条件について、後者の女性が「重視」という回答割合の変化についてもう少しみていきましょう。育児休業法(現在の育児・介護休業法)が施行されたのは1992年のことです。施行後5年たった97年の同調査の結果をみると、結婚相手に求める条件として男性の「家事・育児の能力や姿勢」を「重視」とする女性の割合は43.6%と半数足らずでした。それが24年間で30ポイント近く上昇したのです。

2021年調査では、もう1つ注目点がありました。「女性のライフコース」の理想像について、男女ともに「仕事と子育ての両立」が初めて最多となったことです(女性34.0%、男性39.4%)。

それでは、この「女性のライフコース」の理想像でほかの選択肢はどう変化したのでしょうか。結婚や出産を機に退職して子育て後に再び仕事を持つ「再就職コース」を見ると、女性では34.6%(前回となる15年調査)が26.1%に、男性では37.4%(同)が29.0%に減少。一方、「専業主婦コース」の場合は女性では18.2%(同)が13.8%に、男性では10.1%(同)が6.8%に減少しました。

上述した調査は、18歳から34歳の未婚者を対象としたものですが、若手世代を中心に、ライフスタイルや仕事に関する価値観が大きく変容している点は注目に値します。企業側においても、働き手のニーズをくみ取った環境を提供し、育児などを含め私生活と仕事の両立を支援することが、優秀な人材を採用するためにも求められていると言えるでしょう。

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