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研修で遅刻 先生に個人授業を願い出る

私は52歳の時に約30年間勤めた会社を辞め、起業に参加しましたが、その原点は更に10年前に遡ります。会社が提供する半年間に及ぶマネジメント研修プログラムに参加していたのですが、そのうち1回だけ、仕事の都合で遅刻してしまい、昼ごろに駆けつけた時には既に研修が終了してしまっていたプログラムがありました。しかし、仲間によれば、その研修はこれまでの中で最も面白かったと言います。「ここまで全部出席してきて、今日だけ出られなかったのはもったいないなあ」と皆が口をそろえて言います。

何とも残念と悔しがっていたところ、先生はまだ研修後の昼食中とのこと。知らない人に飛び込むのは決して得意ではない私でしたが、そこは思い切ってずうずうしくなろうと、食事中の先生のところに行きました。「すみません。遅刻して研修を受け損ないました。でも、あまりに残念なので個人授業をしてくれませんか」と思い切ってお願いしてみたのです。

後で聞くと、「遅刻してきて個人授業をしろとは何てずうずうしい奴なんだ」と思いながらも「そこまで言ってくる奴もいない。面白い」と人の良い先生は個人授業を引き受けてくれました。それがきっかけで意気投合し、先生は年に何回か酒を酌み交わすメンターのような存在になり、10年後に一緒に事業を立ち上げることになるのです。

もし、私が先生の研修に間に合い、普通に研修を受けていたならば「面白かった」で終わっていたことでしょう。たまたま遅刻をして聞き逃したこと。たまたま先生がまだいたこと。普段しないような「ナンパ」を思い切ってしてみたこと。これらが重なって10年後の独立につながっていったのです。その時の私はまだ、計画的偶発性理論と言う言葉を知りません。

ただ、振り返ってみれば、まさにこの時の行動が遅刻による欠席という偶然を必然に変えたのだと思うのです。それ以来、私は偶然の出会いを無駄にしないようにと心がけています。興味深い人だな、自分と波長が合いそうだなと思う人に出会ったときには そのままにせず、お礼の連絡とともに「もしよろしければ、今度一献いかがですか」などとお声がけをするようになりました。

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