LIFULLの企業内大学ゼミに500人 社員の自主性刺激
「企業内大学」のつくりかた vol.2 LIFULL大学(前編)
リスキリング戦略プログラム構成は「必須」「選択」「選抜」の3つ
――どんなプログラムがあるのですか。
羽田:必須プログラム、選択プログラム、選抜プログラムの3つに分かれています。
LIFULLでは内発的動機付けを非常に大事にしているので「学びたいことは自分で見つける」のが基本だと考えています。ですから必須プログラムはあまり多くはありません。新入社員研修やマネジャー研修、クリティカルシンキングなど、ビジネスパーソンとして最低限必要な知識・スキルを職種別・階層別に学んでいく形です。
当社で特徴的なのは、マネージャー向けのプログラムを社長の井上高志も人事部門と一緒になって作り、自ら講師を務めている点でしょうか。メンバーとのコミュニケーションから目標設定、進捗管理の方法、エンゲージメントに至るまで社長から直接話を聞けるので、社員には刺激になっていると思います。
選抜プログラムは、次世代リーダーの育成を目的としています。対象は営業やマネージャーとして実績を出し社内アワードを受賞したり、役員からの推薦を受けたりしたメンバーで、海外研修などを実施しています。
「営業学部」「ものづくり学部」までそろう
村川:3つの中で、講座の数が1番多くテーマも多岐にわたるのが「選択プログラム」で、こちらは希望する社員による自主ゼミ的なものです。「営業学部」「ものづくり学部」「ビジネス学部」があり、年間で30〜50くらいの講座が開かれています。各ゼミはだいたい10名から20名くらい、のべ500人くらいが参加しています。
例えば、「不動産業界の最新動向を学ぶゼミ」や「統計を学ぶゼミ」「SQL(データベースを操作する言語)の基礎を学ぶゼミ」「アジャイル開発(短期間で検証や改善を繰り返す開発手法)を学ぶゼミ」などがラインアップにあがっていますね。社長が塾長を務める「経営塾」も選択プログラムの中にあり、こちらは数カ月にわたって事業立案のスキルをみっちり学び、最後はプレゼンまでするというかなりボリュームのある内容です。
ユニークなものでは働くパパ・ママ支援をテーマにしたゼミもあります。「保活ゼミ」や「小1の壁ゼミ」では、保育園の探し方から壁の乗り越え方、さらに子育てしながら働く上でのヒントを経験者から聞いたり、当事者同士で情報交換したりしています。
社員のエンゲージを高めることにつながる
――学ぶのは、仕事上のテクニカルスキルだけではないのですね。
羽田: はい。我々の社名には「あらゆるLIFE(生き方・暮らし・人生・生活)をFULLにする(満たす)」という意味が込められていまして、社員のLIFEをいろいろな側面から支援することは、社員のエンゲージメントを高めることにもつながると考えています。
このゼミも社員の提案から始まりました。もともとは、ある時、女性社員数名から私がランチに呼び出され、何を言われるのかと若干ビビりながら行ったところ、「育児や介護などで大変な社員を支援したい」と提案され、「それはぜひやってください」というので有志社員によるワーキンググループができたんです。そのグループから、今度はLIFULL大学でゼミをやりたいという話が出てきた。まさに内発的動機付けですね。
――講師も社員なのですか。
村川:ゼミに関しては、年に数回、社外の講師を招いて開く「リーダーズアイセミナー」という講演会以外は、ほぼすべて社員が講師役です。我々は「ゼミ長」と呼んでいますが、多くは自ら手を挙げるパターンです。「このテーマで学びたいが、詳しいのは○○さんなのでぜひ教えてほしい」というリクエストを受けて、人事部が調整することもあります。
エンジニアのマネージャー陣の間では、全社横断でエンジニアの育成や技術課題について話し合う「未来人材会議」があるので、そこでテーマが決まって講師がアサインされるパターンもあります。
教えることで改めて自分の考えが整理されたという声もよく聞くので、教えることも学び直しになっていると思います。