ローソンが新人研修で使った 世界の見方が変わる本
社会人1年目の課題図書同書が主題とする「思い込み」について、山上さんはローソンでの仕事に引きつけてこう話す。
「全国でこの商品は絶対売れると思ったものが特定のエリアでは売れなかったり、その逆で売れないと思ったものが売れたり、ということは頻繁にあります。ローソンは地域の特性に合わせた品ぞろえや経営をする『地域密着型コンビニ』を掲げていますし、お客様のニーズも刻一刻と変わっていますから、全国一律でないことはある意味当然なのですが、『全体が○○だから、これまでが○○だったから、きっとこうに違いない』という思い込みをしてしまいがち。最近、ダイバーシティー(多様性)に関してよく『アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)』という言葉を耳にしますが、我々の日々のビジネスの中にもさまざまな思い込みやバイアスが潜んでいることを、まずは意識してもらいたい」
自分の経験を美化しないためにも
2年に及ぶ新型コロナウイルス禍はコンビニ業界を直撃した。外出自粛や生活様式の変化によって、例年であれば増加するはずの夏場の売り上げが減少、にぎわっていたオフィス街の店に客が来ないなど想定外のことが起きた。まさにこれまでの常識が通用しなくなるなか、新入社員は各店舗に配属されることになった。

「我々の日々のビジネスの中にもさまざまな思い込みやバイアスが潜んでいる」と語る
そんな彼らに山上さんは「お客様にどんな変化が起きているのか、自分のまっさらな目で見たことをベースに、過去のデータにとらわれずに、自分なりの仮説を立ててチャレンジしてほしい」と発破をかける。
同書が指摘する「10の本能」による思い込みは誰もが陥りがちなもの。研修の責任者を務めてきた山上さん自身も、反省したそうだ。
「大勢の社員を相手にしていると、中にはなかなかこちらの言うことを理解できない人が出てきます。教える側としてはついつい、理解ができない側が悪いと思い込み、相手を責める気持ちになってしまう。でも、実際はこちら側の教え方、伝え方に問題があるのかもしれない。自分のことを棚に上げて相手のせいにしてしまうというのは、上司部下の間のコミュニケーションにおいてもよく起こることです。視点を変えて物事を見るというのはあらゆる部署、場面において必要なんですよね」