ローソンが新人研修で使った 世界の見方が変わる本
社会人1年目の課題図書同書の中で、特に山上さんがローソンでの仕事に照らし合わせ「なるほど」と付箋を貼った箇所がある。1つ目は「思い出は美化される」という指摘だ。同社では入社2年目から店長を任される。最初は誰もが不安でいっぱいで、悩んだり失敗したりすることも多々あるが、慣れてくると自分の経験を美化して話す傾向が強まるという。
「ありがちなのは、あれもできた、これもできたという話ばかりで、失敗した経験には触れなくなるパターン。でも現実をしっかりと見て、できたこと、できなかったことを正確に認識しなければ、成長はできません。これは私も含めた40~50代の管理職への戒めでもあります。『自分たちの時代はこのぐらいのことはやれていた』と過去を美化し自慢話をしても部下は育ちません」
「数字は嘘はつかないが、嘘をつく人は数字を使う」
もう1カ所付箋を貼ったのは、目の前の数字が一番重要だと思い込む「過大視本能」について書かれた箇所。人は、目の前にある確かなものについ気を取られ、物事の全体像を正確につかめなくなってしまうという指摘だ。著者は、「過大視本能」を抑える方法として、1つの数字だけに注目せず他の数字と比較したり、大きな数字に出合ったら「1個あたり」や「1人当たり」など割合の数字にしてみたりするよう薦める。

「思い込みから自由になるためには、学び続けることが必要」と語る山上さん
「『数字は嘘はつかないが、嘘をつく人は数字を使う』という言葉があります。仕事をする中で私たちはさまざまな数字に接しますが、見せ方はいろいろある。そのことを常に頭の片隅において、だまされないよう自分自身で確かめてみる工夫が必要です」
世界の教育や貧困、環境などにまつわる「思い込み」を排することができれば、世界は正しく見えてくると説く同書。思い込みのもととなる「10の本能」を一つ一つ自分の身の回りに落とし込んでみると、「世界の正しい姿」だけでなく、物事を知らず知らずに色眼鏡で見ている「自分の姿」も見えてくる。
山上さんが事務局長を務める「ローソン大学」は、主体的・能動的に動ける人材、リーダーを育成する機関として設立された。
「日々の業務の延長で物事を考えるのではなく、学び続けるという姿勢も『思い込み』から自由になるためには重要。学び続けることが当たり前だという風土を作っていきたいですね」
(ライター 石臥薫子)