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塩野 おじさんからのメッセージとしては、やはり40歳、50歳を過ぎてくると、自分は何ができて何ができなかったか、考えてしまうんですよね。周囲の人はもっとうまくやっているのに、と比較してしまう。そういう場面は絶対にくるので、そのときにやはり自分の居場所が仕事しかないと逃げられない。だったらどうしたらいいか。コミュニティを増やすしかないんですよね。よく言われると思いますが、損得なしで会える人を増やしておく。

大室 この思春期がつらいというのは、「自分が何者かにならないといけない」というところがつらいわけですよね。社会的な名刺に書ける「何者か」ということと、自分が幸せか、自分の気持ちがどういう状態でいたいかって、全然別ですから。この2つのバランスをとるのが、今はたぶんすごく難しい。

最近は友達がYouTuberで大成功したということがあり得るから。人間って、自分もワンチャンできたんじゃないかと思うことって嫉妬するんですよ。

産業医の大室正志さん。産業医科大学産業医実務研修センター、ジョンソン・エンド・ジョンソン統括産業医や医療法人社団同友会の産業保健部門を経て、独立。現在、大企業からベンチャー、外資、独立行政法人まで30社以上の産業医を担当。著書に『産業医が見る過労自殺企業の内側』(集英社新書)など。

産業医の大室正志さん。産業医科大学産業医実務研修センター、ジョンソン・エンド・ジョンソン統括産業医や医療法人社団同友会の産業保健部門を経て、独立。現在、大企業からベンチャー、外資、独立行政法人まで30社以上の産業医を担当。著書に『産業医が見る過労自殺企業の内側』(集英社新書)など。

塩野 うまくいってそうな人でも絶対に何か苦しみはあって、本当のところは誰にもわからないんですけどね。

大室 バランスをとる方法としては、自分が魅力的だと思う人を「ディープラーニング(深層学習)」していくっていうことだと思います。例えばファッション誌は読まなくても、毎日原宿に住んでいる人はファッションセンスを「学習」しているわけじゃないですか。魅力的な人というのは別に社会的に偉い人や成功した人だけじゃなくて、なんとなくキャリア感や生活感などがすてきだなと思う人の考え方をたくさんディープラーニングしていけばいいと思うんですね。そうすると「僕はこっち側だな」って自分にフィットするバランスが見えてくるはずで。

塩野 最終的には「誰と一緒にいたいか」ということになりそうですね。

「練習しすぎたらあかんで」と島田紳助さんが言った理由

大室 「今、何を頑張るべきか?」というご質問の部分ですが、こういうときに気をつけた方がいいなと思うことがあります。例えばお笑い芸人のような、頑張ったことがそのまま報われるわけじゃない世界って、心がつらくなると何を始めるかというと、筋トレを始める人が多いんですよ。芸を練習してもウケるとは限らないけど、筋トレはやった分だけ自分の力になる、裏切らないわけです。だから経営者でも筋トレにはまる人が多いんですけど。

語学とか資格もそういう面があると思うんですよね。やったらやった分だけ自分の力になるということが、1つの精神安定剤になるならそれでもいいと思うんですけど。ただ、これも島田紳助さんが仰っていたのは、「漫才、練習しすぎたらあかんで」と。考えながら素振りしなきゃだめだと。キャリアビジョンとか変数の多い世界が嫌だから、IT(情報技術)系の検定に走るとか、「ここだけ頑張る」っていう人が多いんですよ。それもちょっとバランスが悪いかな。

塩野 正比例じゃないですからね、世の中は。

大室 作家の村上春樹さんも「30歳成人説」と仰っているように、20代は思春期をしていいというのがたぶんデファクトになりつつある。色々なことにトライして素振りしながらも、自分なりのありたい姿を考え続けるしかないのだと思います。

(文・構成 安田亜紀代)

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