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心に迫る、詩歌の言葉

「言葉のプロ」といえば、詩歌に携わる人たちが思い浮かぶ。限られた文字数に表現を練り込む表現力は強い印象を呼び覚ます。

詩人・金子みすゞの「みんなちがって みんないい」という一節は多様性の大切さを広めた。近ごろは「みんなちがって、みんないい」からさらに広がって、「みんなちがって、みんなどうでもいい」という言葉も生まれている。多様性を当然と位置付けたうえで、周りの目を気にする必要はないという意味を込めた。あるメッセージが次のメッセージを呼び込むという、言葉の特性を感じさせる。言葉は使い込んで、育てていけるものだ。

詩人・書家の相田みつをの代名詞的なフレーズとされる「にんげんだもの」はわずかひらがな7文字で、人間のありようを全肯定してみせた。「不寛容の時代」といわれ、ささくれ立った言葉遣いや荒っぽい行動が増えてきた今、他者を受け入れるにあたって、よりどころになってくれる言葉だろう。

「つまづいたり ころんだりするほうが 自然なんだな」という直前フレーズからも、人間のおろかさやふがいなさを自然体で受け止める意識がうかがえる。相田は栃木県足利市にある曹洞宗の寺の住職を生涯の師と仰ぎ、在家のまま、仏道修行を重ねた。老師の言葉を自分なりにやわらかい言葉で読み解いて、独自の書風で書き表した。ひらがなを多く用いた工夫も、禅の教えをやさしげに見せている。

「人間は必ずしも合理的に行動するわけではない」と考える行動経済学の世界でも、相田の思想は重視されていると聞く。2017年にノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー米シカゴ大学教授は「にんげんだもの」を「行動経済学に通じる」と説く。

ビジネス界から広まった「集中と選択」のような、効率・実利を優先した言葉に比べて、「にんげんだもの」がいかにやさしく響くことか。どんな文字もディスプレーで見ると、冷ややかに映る。楷書の枠にとらわれない相田流の書で見ると、言葉に体温が加わる。ディスプレーで文字を見すぎていると感じる人には、書の展覧会へ足を運ぶことをおすすめしたい。言葉のパワーをあらためて実感できるはずだ。

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