役割終えた?新語・流行語 言葉も「分断」の時代に
梶原しげるの「しゃべりテク」高校生やSNSなど、多様な「流行語」ランキングが登場
世の中で「違和感」を指摘する声が強まったのは、15年の「トリプルスリー」がきっかけではなかっただろか。サッカーの台頭が起きて、プロ野球が「娯楽の王様」の座から降りて既に久しい。翌16年も「神ってる」と、野球関連が続いた。
08年の「グ~!」に始まり、12年の「ワイルドだろぉ」、14年の「ダメよ~ダメダメ」に続く、お笑いギャグの流行語は「一発屋」感が高く、この賞自体の意味を揺らがせた気がする。つまり、広く支持された言葉を選ぶというより、賞の発表そのものに話題性を持たせようという演出意図が透けて見えるようになってきたのだ。記者会見の絵面を意識したかのようでもあったが、今年はお笑い関連が影を潜めている。
近年は本家とは別に、独自の流行語を選ぶ動きが広がっている。たとえば、全国の女子中高生から選ばれたマーケティング集団JCJK調査隊が選考するのは「JC・JK流行語大賞」だ。上半期ランキングの上位を見ても、ほとんど見聞きした覚えはないが、選び方の妙なのだろうか、不思議とリアル感は伝わってくる。コトバ部門のトップは「はにゃ?」で、「あれ?」の進化系のような言葉として主に疑問を感じた際に使うという。
ところが、高校生が選んだ「今は使ってるけど年越しはできなそうな流行語ランキング 2021」ではこの「はにゃ?」が支持率34.9%で第1位(「スタディサプリ 進路」のアンケート調査による)。つまり、上半期の流行語は消費期限が半年も続かないわけだ。さらに、大人がまだ使っていたらイタい流行語ランキング 2021」でも「はにゃ?」は2位に入っている(トップは「ぴえん」)。
高校生が「イタい」と感じる理由は「わかってるよ感が気持ち悪い」「教養がなさそうに見える」「無理に若者に近寄ろうとしている」など。大人が親しげな雰囲気をまとおうと努める頑張り方が「イタい」と映るようだ。ここから得られる教訓は「安易に若者言葉や流行語を借りるものではない」ということだろう。
ソーシャルメディアごとに流行語を選ぶ動きも勢いづいている。インスタグラムをベースに選ぶ「2021年インスタ流行語大賞」の第1位は「47 JIMOTO フラペチーノ」。スターバックスコーヒーが47都道府県ごとに企画した商品だ。第2位の「東京卍リベンジャーズ」は漫画タイトル。若者の生活実感に即した言葉が選ばれる傾向があり、トップ10で本家の30候補語と重なったのは、ネットフリックス番組の「イカゲーム」だけだった。
SNS(交流サイト)の種類が変われば、流行語のランキングも変わる。ツイッター上で頻繁に使用されたフレーズを調査した「SNS流行語大賞 2021」(イー・ガーディアン調べ)の候補語を見ると、プロレスラー・長州力の発言に由来する「飛ぶぞ」や、文末を濁す「三点リーダー症候群」など、本家には選ばれなかった言葉がノミネートされている。「マツケンサンバ」は五輪セレモニーの演出への不満から広がったとみられ、五輪の「陽」の部分に光を当てた本家との違いを示した格好だ。