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違う世界が見たい、直接命に関わらない仕事がいい

当時、出産すればキャリアで冒険できなくなると思っていた櫻木さん。子どもの頃から薬しか見てこなかったから、他の世界も見てみたいとエーザイを退職し、人材派遣会社に登録。製薬分野以外で、人の命に直接関わらない仕事がいいと希望を伝えて、ソニーに派遣社員として入った。

メモリースティックの部署に配属されたが、デジタルの世界の知識はゼロ。「メモリースティックって何ですか?という私を、逆にその視点が新鮮で面白いと採用したソニーはすごいと思います。これって今でいうダイバーシティを重視した採用ですよね」

未知の世界で必死に仕事に取り組んだ結果、派遣社員にもかかわらず、大きな展示会に同行しブースの手伝いをするまでになった。「製薬の仕事は人命に直結しているのでミスは絶対許されませんが、ここでは資料に多少誤字があっても笑って許される。製薬はあらゆる規制の中で開発するのですが、展示会ではソニーらしさやかっこよさが重要。いろいろ違いが大きくて、こんな世界もあるんだと楽しかったです」と当時を振り返る。

国際展示会のソニーブースにて。未知の世界に飛び込んでも自分らしく力を発揮できたことが自信につながった

国際展示会のソニーブースにて。未知の世界に飛び込んでも自分らしく力を発揮できたことが自信につながった

「展示会終了後に辞める意思を告げたとき、『正社員にしたら残ってくれる?』と言ってもらえたことが、その後の大きな自信になりました。メモリースティックが何かも知らなかった私が認めてもらえたんですから、どこでもやっていけると思いました。

その後、転職しようとある会社の面接を受け、子どもを産んでも仕事は続けたいので、『女性は出産後にどれくらい働いていますか』など質問したところ、その場ではとても盛り上がったにもかかわらず採用されなかったんです。エージェントの人に理由を聞いたら『櫻木さんが子どもを産んだらどうなるかすごく質問するから、入社したらすぐにでも産むんじゃないかとリスクに感じたみたいです』と言われました。子どもが生まれても働きたいから聞いたのに、それがリスクになると拒否されたことに驚きました」

「残業ができないからダメ」企業は女性を活用できているの?

その後櫻木さんは妊娠し、出産して間もなく夫が突然倒れて入院することに。「夫の入院中、看護のために8カ月近く子どもを保育園に預けていました。夫が退院すると2カ月ほどの間に仕事を見つけないと保育園を退園しなければならなくなります。夫の急病や3回の手術など大変な状態を乗り越えて一安心と思ったところで、さらに切羽詰まった状況に追い込まれました」

夫の治療中、医療関係の資料や薬の添付文書を読み込んでいるうちに、やはり薬が好きな自分に気づき、今度は海外の薬を日本に導入したいと思うようになった。当時保育園は延長保育がなかったので18時のお迎えは厳守。夫も仕事に復帰したばかりで不安がある。自分の性格上、残業をOKにすると延々と残業し続けることが想像できたので残業はしないと決めて派遣の仕事を探した。医薬品開発の事務やサポート業務を希望したが残業ができないとダメと断られ続けた。

「私は午前9時から午後5時までフルコミットで成果を出す自信があるのに、プラス1~2時間の残業ができないだけではねられるのが残念でした。しかも、後々エージェントに聞くと、落とされた企業から『欲しいスキルを持っているのに残業できない点だけがダメだった』と言われていたそうで、子どもがいて残業ができないとこんなにも選択肢が狭まるのかと、女性の就労困難さに驚きました。

そんな中で、ファイザーだけは『定時で帰ったら後はみんなでカバーするからいいよ』と言ってくれたんです」

ファイザーでその後のキャリアにも影響を与える大きなプロジェクトのリーダーを任される櫻木さん。

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医薬品開発→キャリコン 経験を生かせる独立の道へ」へと続く

(取材・文 小島潤子=日経xwoman ARIA、写真提供 櫻木友紀)

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