スタートアップ成長の原則 投資家の視点でひもとく
青山ブックセンター本店
ビジネス書・今週の平台
レジ正面の売れ筋の新刊を並べた平台に展示する(青山ブックセンター本店)
本はリスキリングの手がかりになる。NIKKEIリスキリングでは、ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチし、本探し・本選びの材料を提供していく。今回訪れたのは青山ブックセンター本店。3月末に閉店した八重洲ブックセンター本店に代わって毎月訪れる定点観測書店に加わってもらった。ビジネス書の売り上げは売れ行き好調な新刊が相次いでいることもあって順調だという。著者を招いての店内イベントの集客も好調で売り上げ増につながっているようだ。そんな中、書店員が注目するのは、スタートアップの事業成長の原則を多くの実例を元に投資家の立場からひもといた一冊だった。
豊富な実践例を元に考察
その本は伊藤紀行『スタートアップ 起業の実践論』(技術評論社)。副題に「ベンチャーキャピタリストが紐解く、成功の原則」とある。著者の伊藤氏は、本書の略歴によれば、ベンチャーキャピタル(VC)のDIMENSION(ディメンション、東京・港)に所属、国内スタートアップへの投資・分析、経営支援などに従事する。ビジネススクールで「ベンチャー戦略プランニング」などを教えてもいる。プロの投資家の視点からスタートアップの急成長を支えるノウハウをまとめたのが本書だ。
投資家の視点とはいっても、VCの場合、投資先の経営にかなり深く関わることが多い。さらに同社はスタートアップ・ベンチャー経営に関するヒントやナレッジを発信するメディアも運営しており、数多くの起業家たちを取材するなど、多くの実践例に触れている。このため、起業家たちの豊富なエピソードから成功のノウハウを考察する形になった。起業家たちの生の声とエピソード、これを客観的に分析する投資家の視点。その双方をバランスよく配置しているのが本書の特徴だ。
構成は大きく3部に分かれる。初期の経営課題となる「課題発見」「仮説検証」「資金調達」を考察するのが前編。中編では「マーケティングと集客」「企業の原体験とビジョン」「採用と組織づくり」の3ステージを考察する。後編で扱う2ステージでは、非連続的な成長のためのチャンスとリスク、新規株式公開(IPO)を実現するプロセスとさらなる事業成長についてみていく。