放置は禁物、クラウドサービスの引き継ぎは生前に設定
デジタル遺品管理術(3)
ビジネススキル故人が残したデジタル機器やデータを「デジタル遺品」と呼ぶことがあります。デジタル機器を使っていれば、ファイルだけでなく操作履歴やクラウドサービスの契約など、多くのデジタルデータが残っています。ある日突然やってくる「別れ」に備えておかないと、周囲の人に迷惑をかけたり、大事なものを渡すことができなかったり、見られたくないデータを見られたりするかもしれません。そんな事態に陥らないように今から備えておきましょう。5回にわたって徹底解説します。
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ここからは、雲の上にあるデジタル遺品、クラウドサービスについて考えていこう。預貯金など、遺産として分類されるものは後述するとして、ここでは無料のクラウドサービスと、サブスクリプション(定額)サービスの処理について説明する。
相続や消去が可能なサービスを活用
クラウドサービスは増える一方で、ちょっとした買い物でもアカウントの作成を要求されることも多い。しかし、無料だからと放置すると、乗っ取られてクレジットカードなどの個人情報を盗まれたり、SNSであれば虚偽情報の発信源や詐欺につながることもある(図1)。必要なデータは家族や仲間に託し、不要なアカウントは削除してもらうよう、書き残すのが一番だ。

図1 たとえ無料のアカウントであっても、放置すればアカウントの乗っ取り被害に遭いかねない。有料サービスはもちろん、無料サービスでも解約できるよう情報を残そう
故人のアカウントがわかっても、遺族がアクセスすると、「不正アクセス禁止法」に抵触する恐れがある。とはいえ、クラウドストレージに残したファイルなど、遺品整理が目的なら大きな問題にはならないだろう。トラブルを避けるには、相続者全員の確認を取り、複数人で作業するとよい。
放置されたアカウントへの対処は、クラウドサービスによって違いがある(図2)。利用しているサービスの規約がどうなっているか、調べておきたい。LINEの場合、本人以外は名義を継承して使い続けることができない「一身専属」であり、1年以上放置するとデータは自動削除される(図3)。家族で交わした会話などがあれば、早めに保存して残すとよいだろう。

図2 サービスによってデジタル遺品の扱いは異なる。事前にできることがあればやっておこう

図3 LINEの場合、アカウントは「一身専属」なので、家族でも継承することはできない。また、最終アクセスから1年以上経過すると自動削除される可能性がある