あるはずのデジタル化された資産、見つからないときは
デジタル遺品管理術(5)
ビジネススキル故人が残したデジタル機器やデータを「デジタル遺品」と呼ぶことがあります。デジタル機器を使っていれば、ファイルだけでなく操作履歴やクラウドサービスの契約など、多くのデジタルデータが残っています。ある日突然やってくる「別れ」に備えておかないと、周囲の人に迷惑をかけたり、大事なものを渡すことができなかったり、見られたくないデータを見られたりするかもしれません。そんな事態に陥らないように今から備えておきましょう。5回にわたって徹底解説します。
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スマホやインターネットの利用率を考えると、家族に不幸があったときには、デジタル化されている資産の有無を調べる必要があるだろう。アカウントなどを書き残しておいてくれればよいが、デジタル終活をしている人は、残念ながら少数派だ。
パソコンやスマホが起動できる場合は、ウェブブラウザーの利用履歴やブックマークがヒントになる(図1)。クラウドサービスのアクセス履歴などから探す。ウェブブラウザーにパスワードが保存されていればアクセスは可能だが、「遺産探し」という正当な理由以外での行動は慎もう。

図1 ウェブブラウザーの「履歴」を表示する(1、2)。履歴を見ると、使っているウェブサービスやメールがどこなのか、有料サービスにアクセスしていないかなど、ユーザーの行動履歴がわかる
家族といえどメールを見るのはマナー違反だが、重要な情報源だ。開けるなら、銀行や保険、投資先などからの連絡が見つかるかもしれない(図2)。

図2 メールも情報の宝庫だ。請求書や証券が発行されない場合でも、メールで保険や投資、銀行などの取引情報がわかることは多い
最近はPayPayなどの決済サービスもある。サービスによっては100万円まで入金できることもあるので無視できない。相続に関しては規約に明示しないサービスが多かったが、最近では相続に対応するサービスも出てきた(図3)。規約に書いていなくても、相続に対応してくれる場合もあるので、諦めずに問い合わせてみよう。

図3 事前に入金するタイプの決済サービスでは、一身専属が主流だったが、PayPayの規約が改正されるなど、相続に対応するサービスが増えている
株式投資をしていたはずなのに投資先がわからないなら、「証券保管振替機構」に問い合わせるとよい。同機構は証券会社などから預託された株券の保管などを行う団体で、口座の調査依頼を受け付けてくれる(図4)。

図4 「証券保管振替機構」では、株式所有者の死亡時に、遺族が必要書類をそろえて申請することで、口座の開設先を調べてくれる
(ライター 鈴木眞里子(グエル))
[日経PC21 2022年9月号掲載記事を再構成]