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受講データから社員のスキルセットを把握

受講データは上司や管理部門の担当者も閲覧できる。上司は部下が何をどう学んでいるかを具体的に把握でき、管理部門にとっては、自らの成長のために実際に行動している人材なのかを見極める指標の一つになる。また、特定の領域にアサインする人材を決める際に、必要なスキルセットを持っているか判断する材料にもしている。

もちろん社外で学ぶ機会もあるので、MySUの受講データでわかるのはあくまで社内での学びに限定されるが「アサインの有効性にはつながっている」という。

スキルセットの定義は各社が苦労するところだが、サントリーでも特にデジタル領域に関しては丸2年かかった。

「『デジタル』という言葉一つとっても、マーケティング、システム、バックオフィスなど部署によってイメージするものが大きく違う。そのすり合わせが大変でした」

デジタル人材の要件を20項目に細分化して明示

結果的にどんな定義になったかは「公表できない」とのことだが、社内で必要とするデジタル人材を「デジタルマーケティング人材」「IT人材」「データ人材」の3つに分類し、求める要件を約20項目にわたって細かく明示した。

例えば「デジタルマーケティング人材」のうちAという職種に関しては、①と②のスキルは「知識として知っているレベル」、③④のスキルは「見よう見まねで実践でき、使える人に要求を伝えられるレベル」、⑤⑥⑦のスキルは「自立して業務を遂行できるレベル」といった具合に、求められるスキルとそのレベル感が一目でわかるようにした。

では、スキルセットを参考に社員が自分に必要なスキルを把握したとして、次の段階ではどのような学びのコンテンツが用意されているのか。

服部さんによると、MySUの中には、1Day集中型で必要なスキルセットについて学ぶことができる「応募型研修」、リンクトインラーニングなど外部学習サイトを活用する「Eラーニング」など複数の入り口がある。さらに直近2年でその入り口に「デジタル学部」と「グローバル学部」が加わった。

学び用のコンテンツを会社がキュレーション

「たくさんのメニューを並べて『好きなだけ学んでください』と言っても、必要なコンテンツを選んで計画的に学習していけるのはごく一部の人に限られるでしょう。ですから会社として強化したいデジタルとグローバルに関しては、学びの導線を作るために、コンテンツをキャリア開発部が新たにキュレーションし直しました」

インタビューに答える服部亜起彦さん

インタビューに答える服部亜起彦さん

グローバル学部のラインアップで重視したのは、グローバルマインドの養成と英語力の強化。サントリーのグローバル化に向けた新浪社長のメッセージや、TOEICなどの英語試験対策講座、異文化理解、ビジネス英語スキルなどの各種講座が並ぶ。

この記事の後編に登場する、将来のグローバルリーダーの育成を目的とする選抜型研修「グローバルチャレンジ」もグローバル学部内のコンテンツだ。社員には「ここまで体系化されたコンテンツはありそうでなかった」と好評だといい、22年10月の本格稼働以降、サントリーホールディング、サントリー食品インターナショナルに本籍を置く社員約6800名のうち2000名近くがアクセスした。

一方、デジタル学部にはデジタル活用の事例などを学ぶ「デジタル基礎」やUI(ユーザーインターフェース)/UX(ユーザー体験)などのデザイン、プログラミング、統計などを学習する講座、さらに「デジタルチャレンジ」と呼ばれる選抜型の研修も含まれている。

外部コンテンツに関してはSchoo(スクー)、グロービス学び放題、リンクトイン、JMA(日本能率協会)マネジメントスクール、テンミニッツTVの5社と提携。対象者を選抜して実施するリーダシップ研修や階層別研修では、自社で作った独自コンテンツを使うことも多いが、ロジカルシンキングやプレゼンテーションなど汎用スキルに関しては「外部の方が時流を捉えているし、自社で開発するよりも総合的に見てリーズナブルなので大いに活用させてもらっている」

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