「学べ」では社員は動かず サントリー流社内コミュ術
「企業内大学」のつくりかた vol.5 サントリー大学(前編)
リスキリング戦略会社が社員のリスキリングを進めるには、学びの機会やコンテンツを提供するだけでなく、一人ひとりが学びに楽しみや意義を見いだせるようなラーニングカルチャーの醸成が欠かせない。服部さんは、サントリーでは「学ぶ・繋(つな)がる・教え合う」をコンセプトに17年に開設された「TERAKOYA」が果たしている役割が大きいと話す。
「TERAKOYAは、よりカジュアルに幅広い分野を学べる場で、社員自らが講師役を務めるケースもあります。ITツールの活用法やマーケティング講座、英語などの汎用スキル系から哲学や歴史などのリベラルアーツ系、ワイン講座など趣味・雑学系、経営幹部の講演など多種多様。21年には277回ものイベントが開かれ、参加者は延べ3万人を超えました。かなり浸透してきています」
学びをポップに紹介するメルマガ
サントリー大学で学ぶ時間は、業務に直結するものや階層別の研修など一部を除いて、基本的には業務時間外だ。自律的な学びを促し、豊富なコンテンツを有効利用してもらうために、どんな工夫をしているのか。
服部さんの答えは「情報やメッセージを、複層的に、繰り返し届ける」こと。いいコンテンツがあっても利用が進まないのは「コミュニケーションの問題が大きい」と指摘する。そのため、昨年からは「SUタイムズ」というメルマガの発行も始めた。

ポップなイラストが目を引くメルマガ
人事系の読み物は堅苦しくなりがちなので、目を引くアイキャッチ画像を入れたり、「○○講座を受けてみた」など個人目線でクスっと笑えるようなコラム風の体験記を載せたりしている。イベントや講座はイントラ上でも告知し、マネージャー向けの研修でも、「こんな講座があるので、ぜひメンバーに薦めてほしい」と呼びかける。「とにかくあらゆる媒体、接点を駆使して何度でも伝えるようするのがミソ」だ。
サントリー大学が事業や経営にもたらす効果を数字で表すのは難しいが、服部さんは「受講者の中で一定数をピックアップし、その後をフォローして見ている。狙ったところにアサインされていたり、少なからず活躍しており、経営陣も同じ認識だと思う」とし、こう続けた。
「サントリーが目指す『世界一人材が育つ会社』はまだ道半ば。『100人100通りのキャリア』を掲げているので、一人ひとりの学びのニーズをいかに的確に捉え、カスタマイズされた学びを届けられるかがキーになってくる。そのために来年度以降もピープル&カルチャー本部が持っている他のデータとも連携させるなどテクノロジーを活用しながら、MySUをパワーアップしていきたいと考えています」
(ライター 石臥薫子)