マネックスがSTEAM教育 論理的・創造的な思考力養う
マネックスグループ社長 松本大氏(14)
ビジネスの視点日本には生きていくための思考力を身につける場がない
日本の教育産業は二極化していて、受験に特化した商業的なビジネスか、引退した人がライフワークとしてほぼボランティアで教えるような小さな教室のどちらかです。受験のためではなく、これからの時代を生きていくのに役立つ、課題を理解してロジカルに考える力、一般教養的な思考力を身につける場がほとんどない。そのぽっかり空いた穴を埋めるのが、私たちのSTEAM教育事業だと思っています。
Vilingは、楽しくて子どもたちが時間という感覚を忘れる、いわゆる「フロー状態」を作り出すためのノウハウや、MITの人工知能研究者であるシーモア・パパート教授が唱えた、実際に何かを作る過程で知識を構造化して学んでいく「コンストラクショニズム学習理論」など、世界的にも認められた理論に基づいて、しっかりとしたカリキュラムを作ってきました。さらに発達障害のある子ども向けにSTEAMとプログラミングをかけあわせた療育教材なども展開していて、中身は素晴らしいのですが、今までスケールできていなかった。そこでマネックスグループがVilingを買収し、我々の資本とこれまで金融サービスで培ってきたネットワークを使って、全国展開していくことにしました。
私は自分が体験していいと思ったものは、みんなに知ってもらいたい、使ってもらいたいとすぐに思う質(たち)なんです。マネックスという会社も、自分が資本市場にとてもお世話になって、ちゃんと使えば資本市場っていいものだと実感したので、それを大勢の人にもっと使ってもらいたいという思いで始めましたし、前回お話ししたART IN THE OFFICEという取り組みも、アートってすごく自分のものの見方を広げてくれたから、会社でも取り入れてみようよと始めました。今回も自分自身、STEAM的な学びが良かったから全国に広めようと。全部、実体験に基づいている。だから限界もあるんですが、良くも悪くも嘘がない。自分が自信を持って勧められるものを事業にしてきたのだと思います。
1963年埼玉県生まれ。87年東大法卒、ソロモン・ブラザーズ・アジア証券を経てゴールドマン・サックス証券でゼネラル・パートナーに就任。99年マネックス設立。2004年マネックス・ビーンズ・ホールディングス(現マネックスグループ)社長、13年6月から会長兼社長。08年から13年まで東京証券取引所の社外取締役、現在は米マスターカードの社外取締役を務める。
(ライター 石臥薫子)