「標準のキャリアパスはない」 社員は学んで自立する
「企業内大学」のつくりかた vol.2 LIFULL大学(後編)
リスキリング戦略講師を務めるゼミ長にとってもアンケート結果は重要で、次回もっと効果的に学んでもらうにはどうしたらいいのか、改善点を考えるヒントなっているようです。教える側、教えられる側双方が成長できるというのが理想ですね。
学びの内発的動機を重要視する企業文化
――日本では、学んだ後に期待できるポストや昇給が提示されないために、社員からすると、日々の業務でただでさえ忙しい中で、なぜ学ばなきゃいけないのかがわかりにくいとか、わざわざ学ぶ気になれないという声があります。その点についてはどう考えていますか。
羽田:心理学の世界では、金銭のような外的報酬が内発的動機付けを弱めてしまうという研究があるようです。「好きだから」とか「面白いから」という内発的動機で始めた活動であっても、ひとたび報酬が約束されると、お金の分はやるけどそれ以上やるのはやめておこうと考えたり、創造性が失われたりするそうです。
私たちも学びと報酬は直接リンクさせない方がいい、好きなことをやるのが大切だと考えています。「学んだ結果としてキャリアチェンジしたい」とか、「キャリアチェンジを目指して学んだので異動したい」と本人が考えるのであれば、会社としては最大限支援します。ただし、給与が上がるかどうかはその後の頑張り次第ですよと。
――内発的動機を起点にした学びでないと、効果も限定されるし、長続きしないということですね。ラーニングカルチャーの醸成については、どんな工夫をしていますか。
村川: やはり、自分がこの先どうなりたいのかキャリアビジョンを描くことが、内発的動機付けにつながるので、先ほどあげた制度のほかにも、キャリアについて考える機会を多く持てるようにしています。
4半期に1度開催する「全社コンパ」は京セラの創業期やJALの復活を支えたと言われる「稲盛流コンパ」を参考に始めたもので、テーマは回によって異なりますが、「自分のビジョンのエピソードやグループビジョンの実行について」「ダイバーシティー&インクルージョン」など仕事の本質に向き合うようなテーマを設定し、社員同士でディスカッションをしています。
他の部署や階層の社員と深い話をすることって結構重要で、改めて自身の仕事を振り返ったり、ロールモデルを見つけたりすることができるんですよね。これからも、学び合えるカルチャーは大事にしていきたいと思っています。
前編「LIFULLの企業内大学ゼミに500人 社員の自主性刺激」はこちら。
(聞き手 ライター・石臥薫子)