採用力高い企業は有望 転職希望者が見るべきポイント
エグゼクティブ層中心の転職エージェント 森本千賀子
次世代リーダーの転職学適切な採用ブランディング・広報ができていない企業多数
近年、企業の採用活動においては、「ATS」と呼ばれる採用管理システムが多く利用されています。ATSとは「Applicant Tracking System」の略で、直訳は「応募者追跡」システム。転職エージェントへの依頼から応募者の選考状況までを一括管理できるものです。

採用力の高い企業を選ぼう(写真はPIXTA)
企業は募集を行う際、複数の転職エージェントに依頼するケースがほとんど。従来、依頼の際はエージェント1社1社に対し、対面で打ち合わせをして求める人材像を伝えていました。しかし、現在はATSで連携しているため、求人を出したり求人内容を変更したりする際には、一斉にエージェントに伝達することができます。
最近は、大手エージェントを退職した人が独立するなどして、転職エージェントの数が増加傾向にあります。そのため、なるべく多くのエージェントに求人情報を流し、網を張り巡らせるような作戦をとる企業が増えています。
しかし、企業からの情報提供は一方的になりがち。中には、現場から要望があった人材要件をマーケティング観点で検証することもせず(その要件を満たす人材が転職市場にいるかどうかも確認せず)、そのまま広報しているケースも見られます。
転職エージェントとじっくり対話していた頃は、求める人材像を深く掘り下げることもできました。しかし今は、企業と転職エージェントの関係が希薄になり、薄い求人情報が拡散されているような状況。網を広く張った分、書類選考や応募前のカジュアル面談などは増えているのですが、マッチングが成立せず採用まで至らない――そんな現実があります。
一方、冒頭で挙げた「採用活動力が高い」企業は、求める人材要件だけでなく、「人材に対する考え方や思い」「働き方」「キャリアパス」「能力開発」「自社で働くメリット」などをしっかりと発信しています。しかも、体面をきれいに整えるというより、日常のリアルな場面などもSNSで発信。「ファン」を獲得することで採用につなげています。そうした活動に、しっかり予算と人員を投入しているのです。
そして、そのような発信は、人事だけではできません。さまざまな部署の人を巻き込み、協力を得てこそ、自社のさまざまな姿を外部へ見せることができるわけです。
現場の社員たちの協力を得られているということは、社員たちのエンゲージメントが高く、「仲間を増やしたい」という思いが共有できているといえます。
これは先ほど、投資家が重視している項目として挙げた「組織力」が高いことのエビデンスにもなり得るでしょう。
「将来性ある企業で働きたい」と考える皆さんが転職を選ぶ際にも、こうした「採用ブランディング」「採用広報」が効果的にできているかどうかに注目してみてはいかがでしょうか。