変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

個々のキャリアプランを理解・支援する企業が選ばれている

最近、スタートアップが重要ポジションの採用を行うにあたり「手紙作戦」をとるケースが増えてきました。入社してほしい人にあてて、経営者自らが手紙を書いてメッセージを送るのです。そこに書かれているのは、「当社に入社すれば、あなたのキャリアにどのようなプラスをもたらすか」です。

この「手紙作戦」のヒントになったのが、ある球団の選手獲得戦略です。

今はメジャーリーグで活躍する大谷翔平選手は、2012年、日本プロ野球のドラフト1位で北海道日本ハムファイターズから指名され、入団を決めました。このとき、球団側が大谷選手を「口説いた」プレゼン資料が公開されています。

その資料のタイトルは「大谷翔平君 夢への道しるべ~日本スポーツにおける若年期海外進出の考察」。高校卒業後、メジャーリーグに行きたいと語っていた大谷選手に対し、海外進出の現状や、海外進出を目指すために日本球界で実績を作ることのメリットを伝えています。

つまり、「あなたが目指す夢に近づくためにはこういう経験が必要であり、うちの球団に入ればその経験ができる」と、プレゼンしているのです。

これと同様に、採用したい候補者に対し、「うちの会社に入社すれば、あなたが描いているキャリアビジョンの実現に近づける」というメッセージをプレゼン資料にまとめて送る企業も出てきました。

もちろん、前の段階で転職エージェントとタッグを組み連携し、その人のキャリア観や将来の目標をしっかりと把握した上で、自社がその人に提供できるメリットを伝えているのです。

実際、この作戦によって、求める人材の獲得に成功した事例が複数社あります。

採用競合が激しくなる中、自社の魅力を一方的にアピールするのではなく、提示年収額を上げるでもなく、その人個人のキャリアプランを支援するスタンスを持ち、自社で働くメリットをロジックで見せる。そのような企業が、「採用力」を高め、優秀な人材の獲得に成功し、ひいては事業成長も成し遂げていくでしょう。

皆さんが転職活動を行う際にも、企業側がどのようなスタンスで自分に向き合っているかを注視してみてはいかがでしょうか。

※「次世代リーダーの転職学」は金曜掲載です。この連載は3人が交代で執筆します。

森本千賀子
 morich代表取締役兼All Rounder Agent。リクルートグループで25年近くにわたりエグゼクティブ層中心の転職エージェントとして活躍。2012年、NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」に出演。最新刊「マンガでわかる 成功する転職」(池田書店)、「トップコンサルタントが教える 無敵の転職」(新星出版社)ほか、著書多数。

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