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経済界は10年後にもZ世代が中心 AIを使い切る人材が必要

――藤井四冠が予想をはるかに上回るスピードで将棋界の第一人者になったのは、人工知能(AI)の普及が大きいとされています。

「瞬間的に判断を求められる局面では、人間はAIの記憶力と分析力には及びません。藤井さんも将棋界の定跡や既成概念だけではなく、AIの考えも頭に置かないわけにはいきません。しかし、藤井さんはそれを唯一解として信じているわけではありません。間違えることもあるとみているのです。AIが結論を出した局面を自分自身で考え直すことが要だとしています。AIに使われるのではなく、AIを使い切る側の人間になることが重要です」

「AIが進歩すれば、いずれ社長の仕事も代行できるかのような予想もあります。しかし、経営者に必要なのは知能に加えて気力です。こちらの方が重要かもしれません。社長業を10年続ければ晴天(利益)ばかりでなく、風雨(損失)もあります。AIでは気力を再現できず、経営トップに欠かせない経営環境に対して五感を研ぎ澄ませておくことも難しいでしょう」

――藤井四冠とは「サムシンググレート」についても語り合っています。自分の能力を超越して何事かを達成した瞬間でしょうか。歴代の永世名人も歴史的な妙手を指した時などに感じたことがあるようです。

「人間の感情と最高位の知識を擦り合わせた状態ですね。神が存在するかどうかは分かりませんが、神の領域を意識することはありますね。企業経営にもそうした瞬間はめったに無いけれど、ありました。藤井さんも将棋の神と1局指してみたいそうです」

――藤井四冠らのZ世代の今後をどう見ていますか。

「早ければ10年後の経済界はZ世代が中心になっているかもしれません。生まれた時からデジタル環境とAIが共存している最初の世代です。発想法が上の世代とかなり違います。日本でも徐々に増えているギグエコノミー(インターネット経由で単発の仕事を発注する経済活動)の担い手で、これまで上ばかり見ていたタテ社会の日本は、AIやオンラインで国境を越えてつながるヨコ社会に変えなければならなくなると思います。若い世代の第一人者になるためには、今まで通り自分の心の情報源をできるだけ広げて五冠、六冠と研ぎ澄ませ、さらに八冠制覇達成へと期待しています」

(松本治人)

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