起業の支えは主将経験の厚み 元ラグビー代表・広瀬氏
広瀬俊朗・元ラグビー日本代表主将・HiRAKU代表取締役(下)
リーダーの母校起業したのは僕の場合、19年9月からラグビーワールドカップ(W杯)日本大会があるとわかっていて、それを盛り上げたいという気持ちが強く、東芝の一社員にとどまっていたのでは関わりが中途半端になると思ったからです。もし、W杯が日本で開催されなかったら、もしかしたら会社員のままだったかもしれません。起業するにあたってはBBTの仲間からたくさんのフィードバックを受けながらアイデアを練り上げていきました。
HiRAKUは、自分自身が、敷かれたレールの上を歩くよりも正解がない中で道を切り開いていくのがすごく好きだというのと、いろいろな人の可能性を開いて、新しい世界につながっていくサポートをしたいという思いで名付けました。真っ先に考えたのは、ラグビーやスポーツの素晴らしさを日本だけでなく世界に伝えていく事業。19年のW杯日本大会を契機に始めた、様々な人が肩を組んで出場国の国歌・アンセムを斉唱して、おもてなしをする「スクラムユニゾン」の普及活動もその一環です。
次世代のリーダー育成も大きな柱の一つです。僕が悩み、格闘する中で体得してきたことをきちんとメソッドとして落とし込み、伝えていけたらと思っています。さらにアスリートの引退後のキャリア支援についてもいろいろ考えています。現状では解説者や指導者になる以外の道がなかなか本人たちにも周りの人にも見えづらい。引退後もこうやって活躍できるんだというモデルを示すことは、社会におけるスポーツの価値を高めることにもつながります。これはスポーツに限らずアートもそうなんですよね。どちらも感性が重要であり、多くの人に感動を与える素晴らしいものなのに、一生生計を立てていくのは難しい。スポーツでもアートでも好きなことを頑張れば仕事になるという可能性を提示できればと思います。
19年にはドラマ「ノーサイド・ゲーム」で俳優にも挑戦。現在は日テレ系列の報道番組news zeroの木曜日に毎週出演するなど活躍の場も広がっている。
北野高校の先輩でもある有働由美子さんの横で1年くらいニュースにコメントしていますが、最初は扱うテーマが幅広いので正直とても怖かったです。でも30年ラグビーのキャプテンをやってきたので、リーダーシップとかその道のことは相当考え抜いてきたという自負があります。これを軸に話ができると「広瀬ならではの視点」を提供できると思いますし、知らない世界に飛び込むことで、あ、あそこで思ったことと今回のこれとは実はつながっているんだなとか、物事の点と点がつながっていく。一本掘り下げることと横に広げることとを両方やると世の中の見え方が変わってくるのが面白いですね。
現段階ではHiRAKUも始めたばかりで、僕自身事業家として成功しているわけではなく、まだ個人事業主の延長線上に止まってしまっている部分もあるので、もう少しビジネスとして回るものを作っていきたい。慶応卒でスポーツをずっとやっていて、日本代表クラスという経歴が結構珍しいため、応援していただけることも多いので、期待に応えられるよう日々精進していきたいと思います。
(ライター 石臥薫子)