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なぜアフリカで拡大し続ける?

佐藤智恵(さとう・ちえ) 1992年東京大学教養学部卒業。2001年コロンビア大学経営大学院修了(MBA)。NHK、ボストンコンサルティンググループなどを経て、12年、作家・コンサルタントとして独立。「ハーバードでいちばん人気の国・日本」など著書多数。日本ユニシス社外取締役。

佐藤智恵(さとう・ちえ) 1992年東京大学教養学部卒業。2001年コロンビア大学経営大学院修了(MBA)。NHK、ボストンコンサルティンググループなどを経て、12年、作家・コンサルタントとして独立。「ハーバードでいちばん人気の国・日本」など著書多数。日本ユニシス社外取締役。

佐藤 新型コロナウイルスの感染拡大がはじまってからまもなく2年がたちますが、この2年を振り返って、経済学者として最も驚いたことは何ですか。

バナジー 私が最も驚いたのは、世界各国がそれぞれ自国の利益を最優先し、世界共通の重大課題である新型コロナウイルス問題に対して一丸となって取り組んでこなかったことです。

なぜアフリカで急速に新型コロナウイルスの感染が拡大し続けているのか。国際社会がアフリカの人々に対してほとんど何も支援をしてこなかったからです。この現実に私は驚くばかりです。仮に自分の利益を優先し、アフリカの人々のことを気にもかけないような人であっても、アフリカの人々を支援しなければ、やがてウイルスが回り回って自分のところにもどってくることぐらいはわかるはずです。

そもそもデルタ型はなぜ広がったのかを考えてみてください。デルタ型は最初にインドで発見され、急速に他の国へと広がっていきました。その理由はインドをはじめとする発展途上国でワクチンが不足していたことです。そして今、南アフリカで発見されたオミクロン型が世界に広がり、同じことが繰り返されようとしています。

ワクチン接種を受けるのは、世界の人々のためだけではなく、自分自身のためなのです。そして世界の人々にワクチンを提供するのも、自分のためなのです。世界のどこかでウイルスがある限り、ウイルスはまた戻ってきてしまいます。

私は先進国がワクチンを惜しみなく他の国に提供し、ワクチンの特許を放棄することを願っていましたが、実際にはそうはなりませんでした。発展途上国では依然として深刻なワクチン不足が続いています。アフリカ全体のワクチン接種完了率はたったの6%(21年10月)です。

この現状は予想もつかなかったものです。経済学者は人間が私利私欲を追求することを前提に考えますし、私自身は「人間は私利私欲を追求するだけではなく、他者を思いやることができる」と前向きに考えて、そうした人間の良心に焦点を当てた研究をしてきました。しかし、私利私欲の追求という観点からも、人間性という観点からも、この現象は説明できませんし、私にも理解不能です。いま世界経済は異様な機能不全状態に陥っているのです。

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