女性版骨太の方針 男女賃金格差の開示義務化の影響は
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ダイバーシティ男女間の賃金差異、算定の方法
この7月にも女性活躍推進法に基づく省令を改正し、常時労働者301人以上の事業主に対し、社内における男女間の賃金格差の情報を開示することが義務化されます。
22年6月17日に厚生労働省の諮問機関である労働政策審議会の分科会で示された内容によると、情報開示は企業単体ごとに求め、給与の実額ではなく、男性の賃金平均に対する女性の賃金平均の割合(%)を想定。全労働者を対象とした比較に加え、正規雇用労働者(直接雇用で期間の定めのないフルタイム。短時間正社員を含む)、非正規雇用労働者(パートや有期雇用労働者。派遣社員を除く)と3区分での開示を求めます。
算定の対象とする「賃金」は、基本給や残業代などの手当、賞与を含み、退職手当や通勤手当を除外するかどうかは企業ごとの判断に委ねられます。計算方法としては、正規、非正規、全労働者について、それぞれ男女別に直近事業年度の賃金総額を計算し、人数で割って平均年間賃金を算出。そのうえで、女性の平均年間賃金を男性の平均年間賃金で割った上で100を掛けた(%)ものを男女賃金の差異とします。
また、差異の状況についての説明欄を設け、説明を追記したい企業はそこに書き込むことができるようにする予定です。
男女格差の要因を分析して差異の解消へ
男女間の賃金格差を、雇用形態ごとに「見える化」することは、意義のあることです。しかし、想定されている方法は、単純平均での比較であるという点が気にかかります。というのは、賃金は性別以外にも勤続年数や学歴、年齢、役職、職種などによって違いがあるからです。
実際、男女間の賃金格差の要因を分析した厚生労働省の調査では、「役職(管理職比率)」が差異に最も影響を与え、次いで「勤続年数」が影響しているとしています。
男女間の賃金格差の割合が示されたとしても、その企業における差異の要因がどこにあるのか理解できなれば、解消につなげていくのは難しいのではないでしょうか。
おそらく、多くの企業において差異があることが想定されます。このとき、例えば「男性社員と女性社員との平均勤続年数の差が〇年と大きいことから賃金の差異が生じている」といった追加的な説明(弁明)に終始すれば、格差の解消は期待できません。
男女間の賃金格差を開示するならば、企業ごとに格差の要因を分析し、解消を進めていくためのアクションにつなげることが重要です。