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社会保障制度・税制の見直しも検討

国内における家族の姿を見ると、1980年は「夫婦と子供」世帯が全体の42%を占めていました。しかし、2020年には「夫婦と子供」世帯は25%と減少し、「単独」世帯が38%で一番多くなり、「ひとり親と子供」も9%に増加しています。夫婦単位で考える従来の社会保障・税制度の在り方は時代にそぐわないものになりつつあるのです。

例えば、会社員の夫に扶養されている妻で、本人の年収が原則として130万円未満(厚生年金の加入要件に該当する場合を除く)であれば、被扶養配偶者として、健康保険料や国民年金保険料を支払うことなく、給付を受けることができます。一方、配偶者が自営業者の場合は、いくら夫に扶養されていても、国民健康保険料や国民年金保険料を支払わなければなりません。

こうした制度によって、有配偶者の非正規雇用女性はいまだ4割程度が就業調整を行っており、女性の就労を抑制する一因にもなっています。離婚した場合、女性の年金額は低い傾向にあり、配偶者の経済力に依存しやすい制度設計は、男女間賃金格差も相まって、女性が経済的困窮に陥るリスクを高める懸念を拭えません。

このように現行の制度は、分配の観点から公平な仕組みとなっていないのではないか、という意見も強く、社会保障制度や税制などについて検討を行っていくことが、骨太の方針に盛り込まれました。

女性の長寿化を考えれば、生涯受け取れる老齢年金の存在は欠かせないものです。そのために相応の保険料負担を求めていくことは、先送りにせず議論すべき課題だと考えます。

男女間の賃金格差の開示による影響

今後、男女間の賃金格差が開示され、理由も釈然としないまま格差が大きいことが明らかになれば、その企業で働く女性たちのモチベーションに影響を与えることは想像に難くありません。そして転職・就職先の企業候補からも、外れてしまうようなことになれば、採用活動にも影響を与える可能性が出てきます。

また、23年度にも金融商品取引法に基づく有価証券報告書の記載事項に、男女の賃金格差の割合を開示することが義務化される見通しです。格差が大きいことに適切な理由が見当たらなければ、ジェンダー・ダイバーシティ(性別の多様性)において人材を有効に活用できていない企業だと見なされ、資本市場における企業価値にも影響を及ぼしかねません。

このように、男女間賃金格差の情報開示は、形式的な法律上の義務に留まるものだと考えない方がよいでしょう。格差解消への取り組みは、採用や配置、昇進、人材育成など、雇用管理の在り方や働き方の見直しにもつながっていくのではないでしょうか。

これからますます人生が長期化していく中で、「経済的な自立」は、私たちが否応なしに向き合うことになる重要なテーマです。今すでに働いている方は、ご自身のキャリアを大事にしてください。仕事から離れている方は、新たなキャリアを形成する好機と捉えてみてはどうでしょうか。女性版骨太の方針では、デジタルリテラシーなどリスキリングを目的とした教育の推進も掲げています。利用できる仕組みがあれば大いに活用し、自らチャンスを引き寄せていきましょう。

佐佐木由美子
人事労務コンサルタント・社会保険労務士。グレース・パートナーズ株式会社代表。人事労務・社会保険面から経営を支援。多様で柔軟な働き方の雇用環境整備や女性の雇用問題に積極的に取り組んでいる。働き方やキャリア、社会保障などをテーマに多数執筆。

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