テレワークで浮いた3時間、雑談不足は「専用部屋」で
技術者の働き方ホントの話セレクション浮いた時間で「岡ちゃんの部屋」を開設
長い無駄話がなくなるというのはテレワークのメリットですが、無駄ではない雑談もできなくなる弊害があります。岡山さんは出社していたときには部下に軽く声をかけて様子を確認していました。岡山さんは話し上手というより聞き上手なタイプなので、メンバーの話に耳を傾けながら問題がないかチェックしていたのです。テレワークでそれができなくなり、調子を崩してしまう部下も出ていました。
そこで毎日午後4時から5時の1時間、自由に何でも話せる部屋をつくったのです。業務の報連相(報告・連絡・相談)や人事部門に実施を指示される面談とは別に、「何となく雑談できる時間帯」を設けました。明確にそのための場を設けたことで、何となく話して物事を整理したいメンバーや、何となく気分転換をしたいメンバーが入室するようになりました。
上司によっては「雑談の場をつくっても誰も来なかったらどうしよう」と考え、開設に踏み切れない人もいます。しかし岡山さんは「来なければ来ないで全く気にしない。自分の仕事を進めるだけ」と穏やかに言います。実際、岡ちゃんの部屋を開ける週5回のうち、何となく部下が入ってくるのは週3回程度だそうです。
逆にこうした雑談の場をつくらなければ、「メンバーはどうしているか」「いつ話しかけたらよいか」などと悩みながら過ごすことになります。それならば、毎日そのための時間をつくって待つほうが気が楽だというのです。それは一理あると筆者も思います。
なお岡ちゃんの部屋は、実施のルールを明確に示しています。「他のメンバーが後から入ってきても、複数人で会話を継続する」「個別の話をしたいときは、別途相談の時間を取る」などです。例えば1対1で話していて他の人が入ってきた場合にも、自分は抜けたほうがよいか迷わずに済みます。こうしたルールを設けることで、部下も安心して参加できるようになるのです。
岡山さんのような働き方を全てのビジネスパーソンが実践できるわけではありません。テレワークができるかは、自社だけでなくユーザーや取引先など社外の関係者の理解を得られるかも重要です。またそもそも物理的なモノを扱う業種では、完全なテレワークは困難です。岡山さんの場合は「ソフトウエア開発という仕事」「プロジェクトリーダーという職責」「取引先もテレワークを実施している」などの条件がそろっているからこそ可能だということは確かです。
ただ岡山さんの働き方を見ていると、自律的に仕事ができる人にとってテレワークは本当に良い働き方だと感じます。部分的にでもヒントになることがあれば、ぜひ取り入れてみてください。
アネックス代表取締役/人事コンサルタント
早稲田大学商学部卒業後、IT企業、金融機関にて人事業務を経験。株式会社アネックス、一般社団法人次世代人材育成機構の代表として、働きやすい職場づくりを主なテーマとし、企業の人事、人材開発のコンサルタントを行っている。次世代人材育成機構では、代表理事として、学生の就職活動へのアドバイスや、社会人のキャリア支援を20年以上手掛けている。著書に『転職エバンジェリストの技術系成功メソッド』『オンライン講座を頼まれた時に読む本』(いずれも日経BP発行)がある。