公務員への転職広がる 求人は3年で4倍、DXにニーズ
あしたのマイキャリア神戸市「イノベーション専門官」へ転職したケース
ここでは1つの事例として、兵庫県神戸市の「イノベーション専門官(事業企画職)」に民間から転職した織田尭(たかし)さんの体験談を紹介します。
世界で戦える起業家、スタートアップを輩出できる「起業都市」を目指す神戸市。その「イノベーションエコシステム」を構築するために必要なスタートアップとの連携など、様々な企画・推進を担うのが「イノベーション専門官」です。エン・ジャパンで公募し、採用・入庁となったのが織田さんでした。
前職のCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)でも起業家支援施設「スタートアップカフェ大阪」の起業相談員兼イベントコーディネーターとしてスタートアップ支援に携わってきた織田さん。行政の立場に身を置くことで、今までより一層「社会のため」を重視して仕事ができる点や、イノベーション専門官という立場で新しい挑戦ができることに魅力を感じて応募したといいます。

神戸市でイノベーション専門官として活躍する織田尭さん(写真中央)
「民間出身者として、本当の意味で新しい風を吹かすことを期待されている」とは、織田さんが入庁して最初に感じたこと。周囲には優秀な職員が多数おり、行政での長いキャリアを生かして、企画を実現するために必要な庁内やステークホルダーとの調整を積極的に担ってくれているそうです。思っていた以上に企画や意見が通り、実現できる環境に手応えを感じている様子でした。
また、織田さんが「官」の立場で起業家を支援する中で、「行政の仕事とは、起業しやすい土壌をつくること」だと感じたそうです。こうした「構造から作っていく」という挑戦は、行政の立場のほうがしやすいと話していました。より大局的な、影響範囲の大きいミッションに取り組める環境があるようです。
「民官転職」で注意するべきこと
「官」の立場で、社会的な意義を感じながら仕事に取り組めているという織田さん。一方で、民官転職において注意すべき点もあるとアドバイスをもらいました。例えば「自分が気になる点は、入庁前にしつこいくらいに聞いておくべき」とのことです。
確かに、中途採用を強化する官公庁・地方自治体が増えているとはいえ、新しいポジションの採用など「今までにない挑戦」の1つとして中途採用をしているケースも多いです。採用担当者も新卒から長年「官」で仕事をしてきたので、民間出身者の方がどのような点を気にするのか、それがどのくらい気になるものなのか、というのもイメージしづらいのが実情のようです。「気になる点が少しでもあれば入念に聞いておいたほうがよい」と話していました。
例えば織田さんは、一緒に働く人たちに「当事者意識があるかどうか」という点をこれまでの転職時にも重視してきたとのこと。また、自分に期待されている役割、活躍はどんなものなのかを明確にしておくことは、後々のギャップを防ぐ上で非常に重要だと言います。確認をあいまいにしたまま選考を進め、入庁後にギャップを感じてしまうことになれば早期離職にも繋がりかねません。逆に言えば、入庁前にそういったすり合わせを丁寧にしておくことが、入庁後の活躍の秘訣だと言えるでしょう。
今回紹介した織田さんのほかにも、様々な官公庁・地方自治体で、いろいろなバックグラウンドを持つ民間出身者が活躍しています。働き方や働く環境、収入などの変化をいとわず、「官」の立場で担う仕事の意義の大きさにひかれて転職を決めている人は多くいます。
変化の激しい時代、官公庁や地方自治体も強い意志で変わろうとしています。公務員試験なしでの採用、リモート選考の導入、副業OKの募集など、「民間からの風」を受け入れるための新しい挑戦も増えています。官公庁・地方自治体の「これまで」を変え、新しいあり方をつくっていく。社会的影響力の大きい環境で、世の中の変革に関わることで得られる成長は、何にも代えられない経験になると考えています。
