給与が増えない日本 ビジネスパーソンにできることは
20代から考える出世戦略(133)
プロが明かす出世のカラクリインフレが進むということは同じ商品の値段が上がるということです。あるいは値段は同じだけれど、分量を減らすこともあります。
「インフレが進んでいるから、原価高が進んでいるから、値上げをします」
そう言えたらなんて楽でしょう。値上げをしても買い続けてくれるのなら、いつでも値上げは可能です。
けれども決してそんなことはありません。わずかな値上げで顧客を大量に失った企業の例はいくらでもあります。
だからこそ、値上げにふさわしい理由をつくらなければいけません。より良い品質なのか、用途が増える機能なのか、あるいは欲しくなるデザインなのか。それらを総合して、ブランド価値を高めることで、値上げを実現していかなければいけません。それは一人の創意工夫でできるものではありません。多くの部門が共同して実践すべきことです。
だからこそ、組織としての本気が求められます。
たくさん売ることについて本気で考えるとしたらどうでしょう。
時間をかけ、人手をかけて販路を開拓する営業スタイルを続けている会社は多数あります。けれどもそれだけでは前年比2倍などの売り上げは達成できません。特にデジタル化が進む現在においては、デジタル対応を踏まえた総合的なマーケティングの見直しが必要になっています。人手を介して顧客を集めるのではなく、顧客が自然に集まってくる仕組みづくりが求められています。
そのために、新しい理論を学び、ツールを活用し、社内のマーケティングプロセスとセールスプロセスを変革しなければいけません。
だからこそ、全社一体となった本気が求められます。
チャンスと多様性を活用し、本気のリーダーを目指そう
一人の本気を組織の本気にし、全社の本気にする取り組みが今求められています。
そのためには、本気の意思表明をし、周りを巻き込み、全社の動きに変えていかなければいけません。そうしてようやく会社の利益が改善し、従業員の給与に反映されるチャンスが訪れます。
激変の時代の抜本的な変革は、そうした本気のリーダーシップによってのみ達成されるからです。
私たちがリーダーとして活躍することで、自分自身だけでなく、周りの人たちにも良い影響が与えられるようになります。
私は人事コンサルタントとして、各企業の中でリーダーを育成し、活躍していただける評価や報酬の仕組み、教育の徹底などをご支援しています。
そこで常に心掛けているのは、多様な人が認められ活躍できる仕組みを作ることであり、その中で意欲と能力がある人にチャンスが与えられる仕組みを作ることです。
実は私が経営しているセレクションアンドバリエーションという会社は、まさしく、チャンスが与えられる仕組みとしての「セレクション」と多様性が認められる「バリエーション」という、進化生物学の用語で名付けたものです。
チャンスと多様性によって、生物は進化します。
同様に、チャンスと多様性があれば、人と組織も必ず、進化することができるのです。
ぜひ今起きている変化をチャンスとして、皆さん自身のさらなる成長を心掛けてください。
(おわり)

セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント。グロービス経営大学院准教授。人事コンサルタント協会理事。1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年から現職。大企業から中小企業まで180社以上の人事評価制度改革に携わる。