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心の声に従いコーチングに集中

それから4カ月、研修講師とコンサルティング、コーチングの3本柱で生活した。心配していた収入も減らずホッとした。だがそこでハタと立ち止まった。

「お金がなくなる恐怖におびえる人生は嫌だと思って一歩踏み出したはずだったのに、気づいたら目先の収入確保に目が向いてしまっていました。これではいけない。原点に戻らなくてはと。それからは研修とコンサルの仕事は断って、コーチングに集中することにしました。やはり自分の心の声に従って本当に行きたい方向に進むためには、それ以外のものを手放す勇気が必要なのです」

絶対の安定は失いながらも、プロのコーチとしてなんとか生活が成り立つようになった頃、自分が学んだコーチングスクールCTIジャパンでコーチの育成を行うトレーナーの募集があった。09年、オーディションに無事合格したものの、リーマン・ショックがさめやらない時期。受講のキャンセルが相次ぎ、トレーナーは開店休業状態になってしまった。

平田氏(左)は「受講生のコーチングの練習相手になると、相手の成長を感じるとともに、自身も新たな気づきが得られる」と話す

平田氏(左)は「受講生のコーチングの練習相手になると、相手の成長を感じるとともに、自身も新たな気づきが得られる」と話す

そんな時、海外に住んでいたCTIジャパンの創設者、榎本英剛氏が帰国した。同氏はリクルートを経てアメリカに留学。そこで出合ったコーチングに感銘を受け、日本に広めた人物だ。世界的なコーチ養成機関であるCTIのジャパン支部を立ち上げたのち、CTIのヨーロッパ進出のサポートなども行っていた。09年当時はすでにCTIジャパンの経営からは退いていたものの、日本のコーチング界の危機を感じ、10年に最高経営責任者(CEO)に復帰した。

「彼が僕に言ったのは、コーチングに強い思いがあるのなら、自分がコーチとして活動するだけでなく、もっとコーチングを世の中全体に広めるために貢献してはどうかということでした。それまで僕の辞書に『貢献』という言葉はありませんでした。自分が、自分の内なる声に従ってどう生きるかで精いっぱいだった。でも榎本さんから、お金がどうこうではなく、『周りのために貢献すれば絶対いつか返ってくる。だから一緒にやろう』と言われて、僕自身は個人事業主という立場だけれども、コーチングを世に広めて業界を盛り上げる活動を一緒にやろうと決意しました。その頃からCTIの経営にも深くかかわるようになったのです」

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