城や都の場所はなぜ変わった 古地図で見る日本の構造
『地形で読む日本』
若手リーダーに贈る教科書 これまで古地図の表現や新旧の地形図・地形条件などから、宮や都および城郭の移動を始め、位置・立地やその変化について確認してきた。さらに、城下および多様な都市と陸上・水上交通のかかわりをめぐる検討も加えた。その結果、これらの立地の多様性とともに、その変化がとりわけ著しかったこと、また、城下を含む多様な都市の規模や構造が、とりわけ強く水陸交通とかかわっていたことについても、改めて確認することができた。
(第5章 都市はどのように交通と結びついていたか 257ページ)
(第5章 都市はどのように交通と結びついていたか 257ページ)
時間と空間を重ね合わせて世界を見る
街づくりや都市開発は白紙に絵を描くようなわけにはいきません。ベースとして知っておきたいのが時間と空間が織りなす歴史地理学的背景です。著者は歴史地理学の視角について次のように語ります。「近代科学として歴史学と地理学が別の学問とされる以前には、歴史と地理は極めて近い視角であり、古代中国や古代ヨーロッパの古典的な史書でも、この二つは強く関連する見方であり、多様な事情の両面だった。この見方の有効性は、近代科学成立のあとにおいても実際に、また完全に失われたわけではない」
本書が扱っているのは近代以前、江戸時代までですが、そこから先の構造変化をも織り込んだ上に現在があり、未来が開けてきます。「おわりに」の中で明治以降を考える手掛かりについてもさらりと触れていますので、自ら考察してみるのもいいかもしれません。
◆編集者からひとこと 日本経済新聞出版・桜井保幸
平安京や藤原京などの都、安土城や姫路城などのお城、東京、大阪、新潟、博多などの都市がなぜ、そこにできたかは、地形を読むことによって見えてきます。考えてみれば、ビジネスにおいても「立地」や「地の利」というのは決定的に重要です。時間軸と空間軸を重ね合わせて世界をとらえる歴史地理学の視点は、ビジネスピープルにとって大いに参考になると思います。