飲食店でバレる「品格レス」 傲慢な態度、なぜ表れる
梶原しげるの「しゃべりテク」粗暴な言葉遣いを、飲食店で耳にする機会が増えた気がする。店員をどなりつける物言いは、遠くで聞いているだけでも気持ちがささくれ立つ。相手を傷つけてしまうのに加え、うっかり口を滑らせてしまうと、人格を疑われることにもなりかねない。気になったケースを通して、自らを戒めたい。
トラブルが起こりやすいスポットにレジが挙げられる。会計がもたつくケースは客の怒りを買いやすい。だが、店員側は別段、わざと手間取っているわけではないのだから、ことさらとがめだてない態度が好ましいだろう。近ごろは電子マネーを巡るトラブルが増える傾向にある。
レジでだだをこねる「ペイ男」
・店員 「ありがとうございました。お支払いはいかがなさいますか」
・客 「じゃ、●●ペイで(カードをセンサーにかざす)」
・店員 「承知しました。あのぅ、残高が足りないようですが、いかがいたしましょう」

キャッシュレス決済はしばしばレジトラブルの種に(写真はイメージ) =PIXTA
・客 「はぁあ。なんだよ、それ。ざけんなよ」
・店員 「(「私、別にふざけてはいないのに」といった感じの困り顔で)どうなさいますか」
・客 「しょおがねぇな。俺、現金なんか持ってねぇよ。どうにかなんねぇのかよ」
・店員 「と言われましても」
・客 「じゃあ、足りない金額は、こっちの▲▲ペイで(と言って別のカードを差し出す)」
・店員 「お客様、まことにおそれいりますが、2種類の電子マネーでのお支払いはシステム上、お受けできないことになっております」
・客 「何だぁ、使えねぇなぁ、お前んとこは」
・店員 「まことに申し訳ありません。あのぉ、現金でお支払いいただくわけにはまいりませんでしょうか」
・客 「現金は持ってねぇつってんだろ。ちゃんと聞いてんのか」
こんなやりとりが10分間以上も続き、レジ周辺には会計や案内を待つ人の行列ができた。大半の人は、ごねる「ペイ男」の素行を苦々しげな表情で眺めていた。
キャッシュレス決済が広がったことに伴うトラブルのようにも映るが、周囲に不快感を与えた主原因はそこではない。「ペイ男」の物言いだ。
まず、「持ってねぇ」式の語尾が耳ざわりだ。「知らない」はプレーンな言い方だが、「知らねぇ」に変えると、ごねたりすごんだりする雰囲気が加わる。
今回の場合、事前のチャージを怠った落ち度は「ペイ男」にある。保険的な意味で現金を持ち歩かなかったのも彼のミスだ。
しかし、「持ってねぇ」という口ぶりには、「俺に落ち度はない。現金を持ち歩かなくて何が悪い」と、開き直った態度がのぞく。「僕、悪くないもん」と言い張る駄々っ子のような幼さも感じられる。
「ねぇ」式の否定形は、男性が使うことが多い。「ない」を荒く崩した言い方には、語気を強める効果があるだろう。強く出ることによって、要求を押し通したり、相手を揺さぶったりする狙いも透けて見える。男っぽさの演出とも映る。
だが、多くの場合、そういった効果のほかに、野卑なムード、不遜な態度、自分勝手な思い込みなどの印象がつきまといがちだ。