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外国出身店員にすごむ「納豆男」

横柄な態度は、食事を注文する場面でも見受けられる。ある定食店で見かけたのは、アジア系と思われる外国人店員への無礼な態度だった。

・店員 「お客様、ご注文をどうぞ」

・客 「サバのみそ煮定食と、納豆、生卵、以上」

・店員 「承知しました」

・客 「おう、よろしく」

・店員 「(しばらくした後、料理をテーブルに届けて)ごうぞ、ごゆっくり」

・客 「おいおい、待てよ。納豆が来てねぇぞ。納豆はどうした」

・店員 「少々、お待ちください。納豆は伝票に書かれていないようです」

・客 「書かれていないって、俺はちゃんと注文したぞ。お前が書き忘れたんだろうが。お前、日本語、ちゃんとわかってんのか」

・店員 「大変、失礼しました。今すぐお持ちします」

・客 「冗談じゃねぇ。俺は最初に納豆を食いたいんだ。サバがさめちまうじゃねぇか。だめだ。お前じゃ、らちが開かねぇ、店長を出せ、店長を」

遠くから聞こえるがなり声に、こちらの食欲がうせる。日本人はいつからこうまで礼儀をおろそかにするようになったのか。店員を軽んじる物腰に不快感を覚えた。

今回は「ペイ男」のケースと違って、店員の側に手抜かりがある。ミスを指摘すること自体は、間違った行為ともいえない。だが、そのやり方は美しくないだろう。

「納豆はどうした」のあたりから既に物言いが荒っぽい。言葉を重ねるに従って、単にミスを指摘するだけではなく、とがめだててやろうという意識が出ているようだ。

こういう「うるさがた」「文句言い」はオフィスでも珍しくない。とにかく一言、ネガティブな口をはさまないと気が済まないタイプの人がいる。批判を加えることによって、自分の見識を印象づけようとたくらむかのようだが、多くの場合、そうした狙いは失敗して、「いやなやつ」感を残すだけに終わることもある。

この「納豆男」の場合、とりわけいやらしく思えるのは、日本語が母国語ではない店員の弱みにつけ込むかのような素振りが見て取れるからだ。しゃべり方や名札でわかりそうなものを、あえて「お前、日本語、ちゃんとわかってんのか」と踏み込むところに、外国出身者を軽んじるごう慢さや差別意識がうかがえる。

相手を見て態度を変えるのは、あざとくあさましい態度といわれる。こっちが強く出ても、反撃が難しそうな相手を選んで攻撃し、切り返しを食らいそうな相手には攻め込まない。こういう人柄は長期にわたって信望を得にくいだろう。立場が変われば、いつ自分を裏切るかわからない相手とはあまり一緒にいたくないものだ。

「店長を出せ」に至っては、店長を引っ張り出すことによって、目の前の店員をおとしめる意図がありそうだ。店長からわびの言葉を取り付けて、自分のポジションを高めようという意図なのかもしれないが、こうした「なめられてなるものか」と意気込む、過剰なほどのプライド表現が当人をかっこよく見せるとは限らない。むしろ、「定食店でふんぞり返るいばりんぼ」「居丈高なプチ暴君」とみえがちではないか。実際、私にはそう映った。

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