会社のガバナンスから日本を考える 企業弁護士の視点
八重洲ブックセンター本店
ビジネス書・今週の平台企業統治めぐるさまざまな事件に言及
鈴木敏文氏が経営の一線を引くことになったセブン&アイ・ホールディングスでの出来事、日産自動車元会長のカルロス・ゴーン氏の逮捕、東芝で起きたさまざまな不祥事、大塚家具で起きた父と娘との間の経営権をめぐる争い……。著者がエッセーを書いてきたこの10年代後半とは、企業統治をめぐるさまざまな事件が相次いだ時代だったことが本書に収められた文章からはっきりと浮かび上がってくる。
東芝の迷走に触れながら「コーポレートガバナンスを形式にとどめては国民のためにならない。株主からの付託の重さに応えられる人材を増やしていくことが必須である」と書き留める。社外取締役への期待も何度となく述べられる。それを支えるための事務局の必要性もよく触れられる。8年の間に徐々に変わっていったこと、それでも岩盤のように変わらないこと。それが何なのかを改めて突きつけられる内容だ。
「牛島さんの本はこの店では安定した売れ筋。入荷したばかりでファンの人たちが買っていったようだ」とビジネス書を担当する川原敏治さんは話す。
2位に稲盛和夫氏の遺著
それでは先週のランキングを見ていこう。
1位は小売業でのSDGs の取り組みが企業の競争力にどう結びつくかを分析し、その推進の仕方を実例を交えて解説した本。2位には先ごろ亡くなったカリスマ経営者、稲盛和夫氏による久々の経営書が入った。死去の報と刊行のタイミングが重なり、大きく売り上げを伸ばした。3位は定番の業界研究ムックの最新版。4位は生産性や効率を追求する考え方から抜け出し、一度きりの人生を楽しむ方法を説く一冊だ。8月に訪れたときも2位で、息の長い売れ筋になっている。人気のユーチューブ講演家がコミュニケーションの極意を説いた本が5位に入った。紹介したコーポーレートガバナンスの本は6位だった。
(水柿武志)