男性育休、上司の心得 「休まれるとつらい」本音はNG
働き方
写真はイメージ=PIXTA
――いざ男性部下に「子供が生まれる」と言われたら?
「下記の4点を押さえましょう。(1)育休制度を説明して、取得意向を確認する(2)申請の出し先など窓口を伝える(3)育児休業給付金について知らせる(4)社会保険料の取り扱いについて知らせる。会社によっては人事部門などが説明するケースもあるかもしれないので、流れを確認しておくといいですね」
――育休の分割取得は何のために認められたのか。
「これまでの男性育休でも、厚生労働省などはママと育休を交代する『バトンタッチ型』、育休を父母で短期間重ねる『引き継ぎ型』等のケースを紹介してきました。男女とも分割取得できるようになったことで、夫婦が仕事の繁閑に応じて何度か交代したり、第2子の育休では第1子の面倒も見るために夫婦で一緒に取ったりと、さらに柔軟に育休を組み合わせられるようになります」
――男性育休に関しては「育休に関する研修の実施」「相談窓口の設置」などが企業に求められている。何を研修すればいい?
「管理職に、制度の説明や上司がすべきことを示すのはもちろんですが、『あなたの感情は部下の前で表さないでください』と伝えることも重要でしょう」
「例えば上司が意向確認の際に『男性の育休は必要ないと思うけど』『1カ月も休まれたらつらいなあ』などと前置きのつもりで話したことが、パタハラ(育児を理由に休業などを取る男性社員に対して、職場の上司や同僚などが嫌がらせをすること)と捉えられることもあります」
――実際のところ、何割くらいの男性が育休を取りそうなのでしょうか。
「男性の育休は想定より多くの男性が取ると見ておくとよいでしょう。私が見てきた企業の傾向から判断すると、対象者へ個別のメッセージを送ったり、管理者にセミナーを実施したりすれば、取得率は8割程度になる可能性があります。2020年4月から国が育休取得を促している男性国家公務員は、20年4~6月に子供が生まれた人のうち99%が取得しました。平均取得日数は50日に及びます」
「会社は欠員が出ても回る組織づくりに取り組むべきです。男性の育休期間に新しく人を雇うことは難しいため、今いるメンバーでカバーすることがほとんどです。仕事を一度止めるのか、別の人に渡すのか、そもそもやめるのか、事前に決めておく必要があります」
イクボスの存在、重要に
厚生労働省の20年度調査によると、民間企業に勤める男性の育児休業取得率は過去最高値を更新し12・7%だった。前年に比べ5・2ポイント上昇したが、8割を超える女性との差はまだ大きい。取得男性の約3割は5日未満など日数も少ない。法改正で取得率や日数の増加に追い風が吹くことが期待できる。
父親が育休を取ることで母親が早期に仕事に復帰し、マミートラックに陥るのを防げるという効果もある。また21世紀職業財団の調査によると、育休を取得した男性の55・7%が「効率的に仕事を行うようになった」、32・9%が「視野が広がった」と回答し、男性自身や組織の成長にも寄与するだろう。男性が前向きに育休を取れるよう、育児を応援する上司=「イクボス」の育成がさらに求められる。
(砂山絵理子)