テレワークが男性を家庭に戻す 東大教授・山口慎太郎
ダイバーシティ進化論
ダイバーシティ
筆者らの研究チームの分析によると、テレワークが週1日増えると、男性の家事・育児にかける時間も家族と過ごす時間も、双方ともに6%ほど増加することが分かった。
日本における新型コロナウイルスの感染状況は、ひとまずの落ち着きを見せている。コロナ禍は社会全体に大きな変化をもたらしたが、私たちのワークライフバランスをどう変えたのだろう。
コロナ禍による変化の一つにはテレワークの導入が挙げられる。昨年4月の緊急事態宣言を契機に幅広く導入され、その後、実施率はある程度低下したものの、首都圏では現在も3割弱の水準を維持し続けている[注1]。
テレワークの導入はワークライフバランスの改善につながるといわれているが、多くの場合、念頭にあるのは女性だ。しかし、テレワークは男性にとっても家族との生活を取り戻すきっかけになりうる。
筆者らの研究チームがデータを分析した結果、テレワークが週1日増えると、男性の家事・育児にかける時間と、家族と過ごす時間のいずれもが6%ほど増加することが分かった。さらに、仕事よりも生活を重視するように意識が変化したと回答する割合も12%増える。一方、本人の実感に基づく回答であるが、平均的には生産性への影響は見られなかった[注2]。
これらの数字は、子どものいる既婚男性のうち、もともとテレワークしやすい仕事に就いていた人を対象としたものだ。彼らにとって、テレワーク実施のメリットは大きいようだ。
テレワークが一定程度、社会に根付くとしても、深まった男性の家族とのかかわり方は変わらずに残り続けるのだろうか。筆者は、この点について楽観的だ。
男性の育休取得の影響を評価した海外の複数の研究によると、たとえ短期間でも育児に深くかかわると、長期にわたり家事・育児時間が増え続けることが報告されている[注3]。