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グローバルな議論に変化の兆し

今回の授賞理由には、DE&Iに関して貴田氏がEYのグローバルな議論をリードしてきたことが挙げられているが、同氏はその議論に最近、ある変化が見られると話す。

「傑出したLGBT+のロールモデル2021」エグゼクティブ部門で世界1位に選出された。写真はロンドンで開催された授賞式典でEYの同僚と

「傑出したLGBT+のロールモデル2021」エグゼクティブ部門で世界1位に選出された。写真はロンドンで開催された授賞式典でEYの同僚と

「今までEYをはじめ多くの企業のDE&I関連の施策は、マイノリティーの人たちにどうやってスキルをつけてもらい、活躍できる場を提供するかという、いわばマイノリティーに対して『頑張れ』というスタンスのものがほとんどでした。でも、最近はマイノリティーだけでなく、マジョリティー側も声を上げていく必要があるという議論が始まっています」

貴田氏は、公民権運動の黒人指導者、キング牧師の"In the end, we will remember not the words of our enemies, but the silence of our friends."(結局、我々は敵の言葉ではなく友人の沈黙を覚えているものだ)という言葉を引きながら、こう続けた。

「キング牧師が言っているのは、差別を見聞きした人が自ら声を上げなければ、それは差別しているのと同じだということ。それはDE&Iにおいても同じです。問題は、一人ひとりが声を上げられる社会をどうやってつくっていくのかです。私が重要だと思うのは、一見マジョリティーと思われる人たちもマイノリティー性を持っていると認識することです。つい最近、50代の男性社員がこんな話をしてくれました。『自分はがんになり、そのことを周囲に隠しきれなくなって初めてマイノリティー側の気持ちがわかった。多様性を認めて誰もが働きやすくしようというDE&Iを、頭ではわかったつもりだったが、自分がマイノリティーになってその意味が本当に理解できた』と。人間は誰しも時と場合によってマジョリティーになったりマイノリティーになったりします。つまりDE&Iは他人事では決してないのです」

貴田氏自身、日本に帰国する際、自らのセクシュアリティーをカミングアウトするかどうか迷った。「プライベートなことをメディアなどで発信する必要はない」という意見があることも知っていた。それでもあえて公にしたのは、「自分は性的マイノリティーでありながら、EYでは実績を認められてトップになれた。キャリア的にはマジョリティー側に立てたからこそ、かつての自分のように悩んでいる人たちのために声を上げよう」と考えたからだという。

「今は『アメリカからご家族で帰国したのですか?』と聞かれれば、サラッと『ええ、イギリス人の夫と戻ってきました』と答えます。私が自然に伝えることで、LGBTといっても特別ではなく、どこにでもいる1人の人間だというのが可視化されるでしょう。そうして声を上げ、行動することが、少しずつ周囲の人を変えていくと思うのです」

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