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「助けられない命もたくさんあった」という

「助けられない命もたくさんあった」という

やっと一人前の医師として道が開けた。しかし、「助けられない命もたくさんあった」という。ERには様々な緊急性疾患で次々と患者が運ばれてくる。心臓マッサージなどの処置を施し、ギリギリで助けられた患者もいたが、亡くなった人もいる。何が問題なのかと思い悩む日が続いた。

一時はERとは真逆の予防医学に活路を求めた。大阪の病院を辞め、東京・新宿のクリニックで予防医学を学んだ。しかし、解は見えてこない。現在の医療制度は社会システムとして十分に機能していない。高齢化が進む中、医師不足は深刻化する一方。国や自治体は財政難に陥り、膨大な医療費の抑制は避けられない。

MBAを取得、バイト医師を経てMRTに

医療を1度離れ、広い視野で学び直そうと考えた。英ウェールズ大学大学院で2年間、経営学を学び、経営学修士(MBA)を取得した。そんな時に出合ったのがMRTだった。小川さんは医局を離れた一匹オオカミの医師。MRTのサイトの会員となり、転職のサポートを受けた。小川さんもアルバイト医師を経験していたわけだ。

そこで慢性的な現場の医師不足をカバーし、医療の改善に貢献するというMRTのミッションに共感。11年に事業本部長として入社し、19年に社長に就任した。コロナ禍で需要が急増し、21年12月期の売上高は30億円に届く見通し。今後もデジタルを活用した医療業務の支援サービスを次々に提供。スマートシティーの医療基盤づくりにも挑戦したいという。

経営者として多忙な日々を過ごすが、「月曜日から金曜日は東京でMRTの業務に当たっているが、土・日曜日は地元の三重に戻り、診療をやっている」と話す。今も非常勤の医師として活動するのは、スマートシティー構想実現のため、常に地域医療のニーズをつかむという業務の一環でもあるが、1人の医師に戻り、患者と向き合いたいという気持ちもある。

人気テレビドラマの「ドクターX」ではないが、日本の医療現場は優秀な非常勤の医師で支えられているのが現状だ。「この週末も患者さんは多かったけれど、意外と疲れませんね。むしろ充実感を覚えている」と笑う小川さん。医師兼経営者として今、最もやりがいを感じているようだ。

(代慶達也)

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