ゲオを科学的に変革できる? 東大院生24歳の挑戦
キャリアコラムわずか4カ月で売り上げ・買い取り予測モデル開発
この結果、いくつかの課題解決策に着手した。まず手を付けたのが店舗開発に不可欠な「売り上げ・買い取り予測モデル」の構築だ。
データ解析のプログラム言語を駆使して既存店舗のビッグデータを徹底的に読み解いた。「ベテランや若手が関係なく立地条件から月間売り上げが予測できるモデルをつくった」という。実際には実装したのは開発からわずか4カ月後の10月、予測精度は高いと社内から評価は上々だった。
もちろん矢口さんのコンサル経験はゼロだが、学生時代に多くの経営者にビジネスの基礎を教えてもらっているので、課題発見や解決能力が自然と身についたのだろう。学生時代から愛読書は「会社四季報」、企業分析も得意技だ。
「矢口君、何でも聞いてよ」。本部に配属されてわずか半年で、各担当の役員や社員から気軽に声をかけられる〝有名人〟となった。「皆さん味方してくれ、ワンオンワンでサポートしてくれている」と笑顔で語る。
矢口効果でデータ分析人材次々
もう一つの得意技は周囲をモチベートする力だ。実質的にゲオのDX推進役となった矢口さんの下には「自分もデータ分析力を磨きたい」という社員が増えた。勉強会も開催、実際、海外部署や運営にデータ分析を活用する30代の社員も出始めている。
故郷の伊勢市でも、矢口さんが東大に入学したのをきっかけに後輩が次々難関大に挑み始めた。「自分の弟も東大に推薦合格したし、出身の小学校からも5〜6人が東大に入りました。矢口でも合格できるのなら自分も挑戦しようと。東大と無縁だった学校が変わりましたね」と笑う。
今の東大生の中には、起業家になったり、スタートアップに幹部として入社したりする学生も出始めている。「立派な大企業に入っても、議事録やパワポ作成ばかりやらされ、能力を生かされないケースが少なくない。若手に任せて、その分の対価も払うという会社でないと、有能な人材は入らない。だからといって、いきなり起業をしても、暴れられる舞台は狭い。やはりある程度の企業規模は必要。ゲオに入社して正解でしたね」と笑う。この4月には東大の研究室仲間が入社予定。新卒で東大卒は2人目。〝矢口効果〟でゲオは大きく変わるかもしれない。
(代慶達也)