変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

1つ事例を挙げてみたいと思います。時間面でもコスト面でもビジネスを間違いなく改善する、ある新サービスがあったとします。その新サービスは、開発前に各種事前調査が行われ、利用者からの好意的な調査結果が集まりました。そして実際にリリースしたところ、ある時期から狙いを超えた「爆発的な勢い」で利用者を獲得できました。しかし、このサービスの成長は途中から鈍化していきます。「これからの時代、ますますこのサービスへのニーズは高まるはずだ」と伸びしろを期待していた矢先でした。

いったいなぜ、そのサービスは急速に成長スピードを下げてしまったのかを検証すべく、アンケート調査が行われました。そこで明らかになったのは、そのサービスのそもそもの起爆剤についての認識の相違でした。開発者は、ある時期に行ったサービス内容の改善によって成長したと考えていました。しかし実際の起爆剤は、コロナ禍の行動変容でした。

ある時期の爆発的な成長は、コロナによる行動制限により、変わらざるを得ないという外的要因が最大の要因でした。つまり、当初想定したニーズではなく、行動変容による一時的なものだったのです。学知をベースとして適切にアンケートを行うことで、物事の本当の原因や関係者の本音を明らかにすることができるのです。

そのほか、企業のブランディングとしてもアンケート活用は有効です。どんなメッセージが消費者に響くのか? どう伝えれば、納得感が得られるのか? 百聞は一見に如かず。ぜひ、一度学知実装のアンケートを依頼してみてください。想像以上のデータが見えてきます。

インサイトは、思わぬところにある

ここまで、学知を実装したアンケートによって得られる知見のいくつかを紹介しました。実際に学知に基づいたアンケートを行えば、ここで取り上げた以外にも、思わぬ気づきがたくさんあるはずです。アンケートで得られたインサイトこそが、マーケットの本音と言っても過言ではありません。行動経済学関連の研究成果でも膨大に出ていますが、人間は合理的ではない生き物です。だからこそ、アンケートによってニーズを拾い上げることは不可欠なのです。

今回紹介したプライシングと、マーケティングリサーチ分野は、多数の研究者が膨大な研究をしています。企業内で感じる日々の疑問も、そのほとんどは、「実は誰かが研究している」分野でしょう。研究成果が、そのまま各企業のビジネスに直結しているわけではありませんが、各研究を自社目線で読み返してみると、実は活用できるのではと感じることも多いはずです。

その研究と出合うために、米国などの先進企業では、多数の経済学者が雇用され、専門家が深く入り込んだ形での課題解決が行われています。現状の日本では、研究者不足もあり、その環境を今すぐ作ることは難しいかもしれません。ローカライズした日本版経済学のビジネス実装は、今まさに急ピッチで進められているところなのです。先行者利益ではないですが、本記事をご覧の皆様がこの流れに乗ってますます発展されること、そして日本企業の成長速度が加速していくことを願っています。

今井誠
エコノミクスデザイン代表取締役・共同創業者。1998年関西学院大学商学部卒業。金融機関を経てアイディーユー(現 日本アセットマーケティング)にて不動産オークションに黎明期から従事。その後、不動産ファンドを経て独立。2018年ディアブル代表取締役、デューデリ&ディール取締役に就任し、不動産オークションでの経済学実装に取り組む。さらなる経済学のビジネス実装に挑むべく、エコノミクスデザインを創業。

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