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「チームを作り、部屋と予算を確保しよう」。高1になった大屋さんは当時の田村哲夫校長を訪ね、企画書を提出した。田村校長は、1983年に渋幕を創立し、全国トップ級の進学校に飛躍させた名物校長。今年3月に校長職を息子の聡明氏に譲ったが、今も学園長・理事長として同校を率いている。

チームでスパコン製作、校長がポケットマネー

「失敗してもいいから挑戦してみなさい」。田村校長は、製作費の足しにとポケットマネーを渡した。当時、天文部に所属していた大屋さんは、部員を説得して部内にスパコン製作の演算班を発足。部室の使用許可ももらい、中核メンバーの3人で役割分担して製作作業を始めた。軽量化や電源確保など様々な工夫をこらしたが、最も難渋したのは室内の温度管理だ。コンピューターは長時間起動すると、高温になり熱暴走を起こす懸念もある。

「原則35度以内に室内温度を調整する必要があるが、通常のエアコンだと電気代もかかるし、非効率だ」。試行錯誤を繰り返し、スポットクーラーを導入して効果的に計算器を冷却する仕組みを考案、温度が上昇する暑い夏も乗り切った。最終の組み立て作業時には天文部のほぼ全員のメンバーが手伝ってくれた。

「空飛ぶクルマ」開発が夢と語る大屋さん

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こうして完成したスパコンの性能は、「1996年時の世界最高速のスパコン並の処理能力がある。とはいえ、現在市販されているトップクラスの高性能ワークステーションぐらいですが」と大屋さんは語る。このスパコンは文化祭などで評判を呼び、校内外に知れ渡った。

国も驚くリサイクルで20万円スパコン

日本はスパコン先進国だ。ソフトウエア開発では米国に出遅れたが、ハードウエアでは今も世界のトップを走る。富士通など日本メーカーは、理化学研究所と手を組み、「京」、そして「富岳」など世界最高速のスパコンを次々開発した。一方で、富岳の開発費は1300億円に上り、「こんな巨費を投じて世界一のスパコン開発する意味があるのか」と疑問視されたこともある。

しかし、大屋さんは、廃棄PCをリサイクルして環境に優しい格安スパコンを製作した。メンバーの協力もあったが、かかった費用は20万円。その発想力や行動力に驚かされるが、どんな生徒だったのか。

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