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渋幕の田村聡明校長

渋幕の田村聡明校長

田村聡明校長は、「突撃型の面白い生徒でしたね。独創性があり、この研究をやりたいと思ったら、どんどん突き進んでいました。特に教員側が感心させられたのはリーダーシップがあること。自分だけではなく、他の生徒も巻き込む力があった」と振り返る。

ここで大事なのはリーダーシップだ。たとえ、どんなに頭脳明晰(めいせき)であっても個人の力には限界がある。このスパコン製作も学校側や天文部メンバーの協力がなければ、実現しなかっただろう。

実は渋幕にはリーダーシップのある異才が少なくない。「ロボット女子」と国内外から注目の女子生徒がいる。現在、高3の立崎乃衣さんだ。

渋幕からリーダー型の異才続々、ロボット女子も

20年春、コロナ禍で医療・介護向けのフェースシルードを自ら設計、製作し、寄贈した。3Dプリンターを駆使して開発したが、より優れているのは仲間を集めて量産体制を築いたことだ。1年余りで2000個以上のフェースシルードを全国の医療機関などに無償で届けた。もともと国際ロボットコンテストの競技チームも率いるなどリーダーとしても活躍していた。

さらに医療関係のボランティア組織も発足、起業もした。国内外の異才を集め、支援する「孫正義育英財団」のメンバーにも選ばれた。同財団のプレゼン大会で、孫さんから直接、「君、すごいね」と声をかけられたほどだ。立崎さんは今、米国の理系トップ大学への進学を目指している。

なぜ渋幕からリーダー型の異才が次々育つのか。それは田村学園長が築いた「自調自考」をベースにしたグローバル人材教育にある。創立当初から積極的に帰国子女を受け入れ、自由な発想で考え、自主的に行動する生徒の育成を目指した。

さらに生徒同士が「教え合い、助け合う」環境づくりを整えた。個人ではなく、チームとして戦う姿勢を磨いた。大屋さんは「渋幕は刺激的だった。進学校の割には宿題など課題が少なく、自分のやりたいことにまい進できる環境だった」と振り返る。

夢はスパコンではなく「空飛ぶクルマ」の開発

大屋さんのスパコン製作の研究は、校内外で各種賞を受賞し、高い評価を受けた。高2の時には「科学の甲子園」でも準優勝した。このような実績を重ね、22年に東大工学部に推薦合格した。意外だったのは電子工学など情報関係の学科ではなく、航空宇宙工学を専攻する道を選択したことだ。

英語も堪能な大屋さんには欧米大進学の道もあったが、「東大の航空宇宙工学は、十分世界と戦えると思う」と語る。

「空には無限の可能性がある。僕の夢は『空飛ぶクルマ』の開発。スパコンは流体力学の計算に応用できるので、必要な研究だったわけです」と笑う。今、東大でメンバーを募り、人力飛行機のサークルを立ち上げようとしている。大空に羽ばたく、次世代のリーダーとなりそうだ。

(代慶達也)

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