採用活況の転職市場 23年度の動向を専門家に聞いた
23年度の転職市場予測(前編)
あしたのマイキャリアコンサル業界 働く環境を整備、女性採用に積極的
次にコンサルティング業界に特化した人材紹介を展開するヒューマセットの石丸隆範社長に聞きました。

ヒューマセットの石丸隆範社長 新卒で求人広告代理店に就職。コンサルティング会社に転職し、キャリアコンサルティングサービスの立ち上げや採用プロセスの効率化などを担当。2005年にヒューマセットを設立
――コロナ禍でも採用意欲が旺盛なコンサル業界ですが、今の求人動向は。
「採用意欲は全体的に高く、コロナ禍の影響はありません。ここ数年、求人数は前年比20%ぐらいずつ伸びている印象です。戦略系や業務コンサルタントに加えて、働き方改革を背景にした人事系、DX、SDGs(持続可能な開発目標)に即した企業の持続的な成長をサポートできる人材のニーズがあります。データアナリストやデータ分析のスペシャリストを求める動きもあります」
――転職者に求められる経験は。
「企業戦略や会計、ITなど特定分野に強く、知識を持っていることは最低限必要です。最近は新規ビジネスの提案や既存ビジネスを拡大するだけでなく、既存ビジネスを一度フラットにして、新たな視点で提案できる『1→0→1思考』を持った人材が求められています」
「例えば、無人のコンビニエンスストアはお客さんの入店から購買まで店員を介さずに完結するため、店内設計やオペレーションなどをゼロベースで考えなければなりません。その業界で働いている人からは新たな発想は出にくく、テクノロジーを使って新しい業務オペレーションをデザインできるコンサルタントのニーズがあるのは、こういった場面です」
「異業種であっても新規事業や新商品・サービス、新たな価値を創出した経験があれば、コンサル業界に転職しても活躍できるでしょう。またコンサルタントはサービス業であるのでクライアントが想定する以外の準備も怠らず、素直で謙虚さがあり、自らの成功体験に依存しないような人が向いています」
――コロナ禍を経て選考方法に変化はありますか。
「今は最終面接を含めてほぼオンラインですが、今後は対面に代わる可能性があります。コンサル企業は働く社員が『商品』。クライアントから好感を得るには印象は大事です。ただ、オンライン面接では人柄や雰囲気をつかむことが難しく、直接会って判断したいという企業の意向が増えそうです」
――コンサル業界は激務のイメージがあります。
「確かに数年前までは夜遅くまで休日もいとわずに働いていましたが、働き方改革によって職場環境はここ数年でかなり変わりました。深夜まで業務になることはほとんどなく、担当プロジェクトが終われば休暇を取れるなどメリハリのある働き方ができます」
「女性の採用にも積極的です。業界の女性比率は2割程度といわれており、まだまだ男性が中心。各社は女性のキャリア支援や働きやすい制度づくりに注力しています。なかには女性応募者の書類選考レベルを下げて、面接で判断する企業もあります」