採用活況の転職市場 23年度の動向を専門家に聞いた
23年度の転職市場予測(前編)
あしたのマイキャリアIT・Web業界 年収50万円増、入社祝い金で最後の一押し
前編の最後はアールストーンの速水泰史さんにIT業界の転職動向を聞きました。

アールストーンシニアコンサルタント 新卒で入社し、20代の若手層から50代のミドル層、経営幹部まで幅広い世代の転職支援に携わる。システムインテグレーターやWeb系企業のエンジニア、クリエーターなどの領域を担当
――米国IT企業では人員削減が進んでいます。国内企業のIT人材の採用状況は。
「求人数は増加が続いており、日系IT企業では米国の影響は感じません。コロナにより20年は落ち込みましたが、21年春頃から回復し始めて、23年度も高い求人ニーズは続くでしょう。DXや従業員の働く環境のIT整備により各社は受注が増えていますが、社内人材が追いついておらず、エンジニア採用は経営の重要テーマになっているようです」
――転職者の年収に変化はありますか。
「入社時の年収はここ1年で50万円くらい上昇しています。例えば、20代のシステムエンジニア(SE)は500万円前後でしたが、今は550万〜600万円が平均です。当社の人材紹介の成約単価はコロナ前の19年と比べると、21年は24%増、22年は32%増になりました」
「入社祝い金を出す企業もあります。金額は10万〜20万円が一般ですが、50万円、100万円を出す企業も少なくありません。求職者の希望年収に届かない部分を祝い金で埋めたり、どうしても入社してほしい人材に対して最後の一押しとして出したりする企業が多いようです」
――どのような求人案件が多いですか。
「開発エンジニアやプロジェクトマネージャー(PM)、ITコンサルタントは企業からの引き合いが止まりません。求められるプログラミング言語はJavaやPHP。企業担当者からは、グーグルが設計したGoやマイクロソフトが開発したTypeScriptなどのモダン言語ができる人を紹介してほしいと要望されますが、転職市場には人材がほとんどいません。そのためJavaやPHPを業務で使いこなし、自己研さんで最新言語を勉強している人が採用されています」
「IT業界は次々に新しい技術が出てくるので、自主的にキャッチアップしていく姿勢は選考で評価されます。求人は活況ですが、勉強していない人は不採用になることがあります」
――優秀な人材を獲得するために企業はどのような取り組みをしていますか。
「1次面接を人事担当者に代わってマネージャークラスが担当する企業も見られます。エンジアは高い技術力を持った人や有名なプロダクトを作成した人の下で働きたいと感じて転職する傾向があります。エンジニアであるマネージャーが1次面接から担当することで高い技術レベルの話ができ、選考の早い段階から応募者の気持ちをつかんで採用しようとしています」
(日経転職版・編集部 町田真寿)