なぜ医師は東日本に少ない? 人口比最少は埼玉県
キャリアコラム栃木県には私立獨協医科大学と、都道府県などが運営に携わる自治医科大学がある。自治医大も学費免除の条件として、出身の都道府県の過疎地で9年間の地域医療に従事することが義務付けられている。岩手県には私立岩手医科大学がある。地方の名門私立医大だが、やはり学費は格段に高い。
京阪神圏に国公立大医学部は8校
一方、西日本は国公立大医学部が充実している。東京大学や医学部を目指す生徒が通う進学塾「鉄緑会」の冨田賢太郎会長は「関西の進学校の医学部志向が強いのは、首都圏と比較して京阪神圏に国公立大医学部が多いからだ」と語る。確かに京都大学、大阪大学、神戸大学、大阪市立大学、京都府立医科大学、奈良県立医科大学のほか、少し足を伸ばせば滋賀医科大学、和歌山県立医科大と8校の国公立大医学部がある。「いずれも大阪市内から通学が可能。関西人は金銭感覚がシビアなため、費用対効果を考えると、勉強ができる子は医師になるのが一番と考える人は少なくない」(大阪府立天王寺高校出身の医師)。
国公立大医学部に進学する高校も西高東低が顕著だ。教育情報サービスの大学通信(東京・千代田)によると、21年までの5年間平均の国公立大医学部医学科の高校別合格者ランキングは1位が東海高校(愛知県)、2位は灘高校(兵庫県)、3位は洛南高校(京都府)。東海は灘などに比べ全国的な知名度が高いわけではないが、名古屋市ではトップの中高一貫の私立進学校。名古屋大学医学部や名古屋市立大学医学部など中京地区の医学部では「東海閥」があるほどで、昔から医師の養成学校として知られている。

大学通信調べ。◎印は私立、無印は公立を示す。合格者数は各高校への調査などから集計した。校名は現在の名称。
医学部ブームが続く中、国公立大医学部の平均偏差値は東大の理科1類・2類とほぼ同水準まで上昇した。東大の高校別合格者ランキング(21年までの5年間平均、大学通信調べ)では1位の開成高校(東京都)などベスト10のうち、灘を除く9校が首都圏の進学校だ。東大はローカル化する一方で、西日本の進学校を中心に「東大より医学部」という志向がより強まっているわけだ。